執筆・監修:佐伯 悠介先生(学習コーチ/指導歴8年)
勉強の前に「机に向かえる仕組み」から。つまずいた子の伴走が専門。
宿題のプリントを広げたまま、消しゴムのかすを集めて遊んでいる小1の子。返ってきたテストを見せてくれなくなった小3の子。「もう分かってるから」と言って、部屋のドアを閉める小6の子。
学年は違っても、「うちの子は勉強しない」と感じている保護者の方へ。
先に結論をお伝えします。勉強しない理由は、学年によって違います。 低学年は習慣と環境、中学年は「分からない」から離れていること、高学年は自分で決めたい気持ち。理由が違えば、効く関わり方も変わります。
ただし、学年に合わない関わり方を続けると、かえって意固地にさせてしまうことがあります。 その分かれ目は後半でお伝えします。「このまま放っておいていいのか」という不安にも、この記事の中で正面からお答えします。
まず結論(一問一答)
Q. なぜうちの子は勉強しないのですか?
A. 性格の問題として見る前に、学年を見てください。 低学年は習慣と環境、中学年は授業のつまずき、高学年は自分で決めたい気持ちが、おもな理由になりやすいからです。
Q. 学年によって、関わり方を変えたほうがいいですか?
A. はい。同じ声かけでも、小1と小6では届き方がまったく違います。親の関わり方は、「隣に座る→近くにいる→任せて確かめる」の順に、少しずつ手を離していきます。
Q. このまま放っておいても大丈夫ですか?
A. 小学校のあいだは、目に見えて困らないことも多いのです。困るのは、中学に上がってからです。テストの範囲、提出物の扱い、数学の最初の単元、家で使える時間——この4つが一度に始まります。後半で具体的にお伝えします。
Q. つい怒ってしまいます。
A. 宿題・丸つけ・テストの3つの場面で、口から出やすい言葉と言い換えを紹介しています。
Q. 家庭だけでは難しいときは?
A. まず学校の担任の先生に相談してかまいません。学校の中の相談先、自治体の相談窓口、外部の学習支援もあります。
小学生の「勉強しない」は、学年で原因が違う
小学校の6年間は、同じ「勉強しない」でも、中身が入れ替わっていく6年間です。
- 低学年(小1〜小2):家で机に向かうこと自体が、入学してから始めた新しい行動です。まだ毎日の流れになっていません。
- 中学年(小3〜小4):授業の内容が、数えたり触ったりして分かるものから、頭の中で考えるものへ移り始めます。分からない単元が出てくると、その教科から距離を取るようになります。
- 高学年(小5〜小6):嫌がっているのは勉強の中身より、「親に言われてやる」という形のほうです。
つまり、性格の問題でも、やる気の問題でもありません。いま、どの段階にいるかの問題です。
なお、学年は目安で、お子さんによって前後します。「小5だけれど中学年の様子に近い」なら、そちらの章を読んでください。

では、それぞれの学年で、実際に何が起きているのかを見ていきましょう。
低学年(小1〜小2):習慣と環境——時刻と場所を先に決める
夕方、ランドセルから宿題を出したのに、鉛筆を持ったまま窓の外を見ている。筆箱の中身を並べ替え始める。「あとでやる」と言ったまま、夕食の時間になる——小1・小2のお子さんをお持ちの方には、見覚えのある光景かもしれません。
この時期の子は、勉強が嫌いというより、「始める」ところで止まっていることが多いのです。毎日やる時刻や場所が違うと、そのたびに「今日はいつ、どこでやるか」を決め直すことになり、そこで手が止まります。
ですから、この学年で先に決めるのは、「何をやるか」ではなく「いつ・どこで」です。
① 時刻を決める。 時計の時刻より、「おやつのあと」「帰ってきて手を洗ったら」のように、毎日くり返す出来事のすぐあとに置くほうが、低学年には分かりやすくなります。
② 場所を決める。 リビングのテーブルでも、毎日同じ場所なら十分です。始める前に、テーブルの上を宿題と筆箱だけにしておきます。
③ 終わりを決める。 「このプリントが終わったら、今日はおしまい」。終わりが見えないと、子どもは始めにくいものです。 量は学校の宿題の分で足ります。親が問題を足すと、次の日から始めるのが遅くなりがちです。
この時期は、中身の出来より、毎日同じ流れで座ること自体が練習です。
低学年のうちは、時刻と場所を決めるだけで変わることがよくあります。ただ、中学年になると、少し違う壁が出てきます。
中学年(小3〜小4):「分からない」から離れている
小2までは自分から宿題をしていたのに、急に嫌がるようになった。「分からない」と言う回数が増えた。答えのページを見て写そうとする——小3・小4のお子さんによく見られる様子です。
中学年では、頭の中で考えないと解けない問題が増えていきます。分からない単元が1つ出てくると、子どもはその単元だけでなく、その教科の宿題全体から距離を取ろうとします。 怠けているのではありません。分からないものに向き合うのがつらいので、離れているのです。
この学年で親がやることは、励ますことより、分からない場所を確かめることです。手順は3つです。
- 何の単元かを確かめる。 「分からない」と言われたら、問題を教える前に、教科書の目次でいまの単元の名前を見ます。
- 前の学年の教科書で、同じ名前の単元を開く。 例題を一緒に読み、そこで手が止まるかどうかを見ます。止まるようなら、抜けはいまの単元より前の学年にあります。
- 教科書が手元にないときは、担任の先生に聞く。 「前の学年のどのあたりから確かめればいいでしょうか」と連絡帳に書くだけで足ります。
小4の算数でどの単元がつまずきやすいか、家庭でどう確かめるかは、小4でつまずきやすい算数の単元と、家庭での確かめ方に単元ごとにまとめています。
「分からないから離れる」は、高学年になると、今度は「口を出されたくない」という形に変わります。
高学年(小5〜小6):自分で決めたい時期——任せ方を変える
「今やろうと思ってたのに」と言い返してくる。横から教えようとすると、「自分のやり方でやる」と手を払う。「部屋で勉強する」と言って、ドアを閉める——小5・小6のお子さんの、よくある姿です。
いまは、自分で決めたい気持ちが育つ時期です。嫌がっているのは、「言われてやる」という形のほうです。ここで親が口を出す回数を増やすと、勉強そのものが、親子の言い合いの種になっていきます。
この学年で試すのは、任せるものと、親が持っておくものを分けることです。
- 本人に任せるもの:やる時刻(家の決まりの範囲で)、やる順番、やり方
- 親が持っておくもの:終わったかどうかの確認、学校からのお知らせ(提出するもの・持ち物・テストの予定)
口を出すのは、本人が「分からない」と言ってきたときと、提出するものが出ていないときの2つだけに絞ります。それ以外は、見ていても言いません。
なお、中学受験を考えているご家庭では、関わり方がこの記事の想定とは変わってきます。始める前に、中学受験を考えている場合の、向き・不向きの確かめ方で親子の条件を確かめておくと迷いにくくなります。
では、ここまで読んで気になっている「このまま何もしなかったら」に、正面からお答えします。
放置するとどうなるか——中学に上がって実際に起きること
はっきりお答えします。小学生のうちに「勉強しない」を放っておいても、小学校のあいだは、目に見えて困らないことが多いのです。 困るのは、中学に上がった最初の数か月です。多くの中学校では、次の4つが一度に始まります。
① テストの範囲が、数週間分になります。
小学校のテストは、単元が終わるごとに行われるのが一般的です。中学の定期テストは、数週間分の授業がまとめて範囲になり、複数の教科が数日のうちに続けて行われます。 前の晩に少し見直せば間に合った小学校の感覚のまま迎えると、どこから手をつければいいか分からないまま当日になる——中1の最初のテストで、そうなるお子さんは珍しくありません。
② 提出物が、成績の材料になります。
中学の通知表の評定は、テストの点数だけでは決まりません。ワークやノートなどの提出物、授業への取り組みも材料になります。 そして中学の評定は、高校入試で使われる内申点の元になります。 出し忘れが続けば、そのぶん評定の材料が欠けていきます。
③ 数学は、最初の単元がその先の出発点になります。
中1の数学で最初に習う単元は、そのあとに続く計算の出発点です。ここで止まると、その上に積む単元でも止まりやすくなります。どの単元でつまずきやすいかは、中1で最初につまずきやすい数学の単元で詳しく書いています。
④ 家で机に向かえる時間が、短くなります。
部活動に入ると、帰宅は小学校のころより遅くなります。限られた平日の夜の時間で、毎日の勉強を自分で回すことになります。
これは、「勉強しないと将来こうなる」という話ではありません。4つの変化は、中学に上がれば多くの子の前に同じようにやってきます。違いが出るのは、それを迎えるときの準備です。 決まった時刻に机に向かう流れと、分からないところを確かめる習慣——この2つが小学校のうちに身についていないと、4つの変化を一度に受け止めながら、この2つを中学で一から作ることになります。前半でお伝えした低学年・中学年の関わり方は、この2つを作るためのものでもあります。
中学に上がってからも勉強しない状態が続いたときの関わり方は、中学生になっても勉強しない場合(ほっとくとどうなるか)にまとめています。
実際に起きることが分かると、今度は「毎日、どう声をかければいいのか」で悩むご家庭が多いはずです。
イライラしたときの声かけ——宿題・丸つけ・テストの3場面
小学生のご家庭で声かけがこじれやすいのは、毎日くり返す3つの場面です。言い回しは、ご家庭の言葉に変えてかまいません。なお、①と②は、親がそばで様子を見ている低学年・中学年向けの言い方です。高学年で時刻ややり方を本人に任せているなら、①②の場面でも声はかけず、口を出すのは高学年の章でお伝えした2つの場面だけにしてください。③は、どの学年でも同じです。
① 宿題が始まらないとき
- 口から出やすい言葉:「宿題、まだやってないの?いい加減にして」
- 言い換え:「宿題の時間になったね。先に座ってるよ」
責める言葉のかわりに、決めておいた時刻を合図にして、親が先に動きます。
② 丸つけで間違いが多いとき
- 口から出やすい言葉:「また同じところ間違えてる。この前も教えたよね」
- 言い換え:「ここは合ってるね。間違えたところから、どれか1つ選んで、もう一回やってみる?」
先に合っているところを伝え、直すのは本人が選んだ1つに絞ります。全部を直させようとすると、次の日から丸つけに持ってこなくなることがあります。
③ テストの点数が低かったとき
- 口から出やすい言葉:「この点数、恥ずかしくないの?」
- 言い換え:「見せてくれてありがとう」
点数の話は、その場ではしません。いちばん困るのは、点数が低いことではなく、テストを見せてもらえなくなることだからです。 中身を確かめるのは、翌日以降で間に合います。
3つとも、叱る言葉を「次にすること」か「感謝」に置き換えています。
ただ、言葉を選ぶだけでは、実は足りません。核心は、関わり方そのものを、学年に合わせて移していくことです。
保護者ができること——関わり方を「隣に座る→近くにいる→任せて確かめる」へ移す
小学校の6年間で、親の関わり方は3つの段階を移っていきます。
冒頭で「学年に合わない関わり方は、かえって意固地にさせる」と書いた分かれ目は、ここです。低学年の子に「自分でやりなさい」と任せると、何から始めればいいか分からないまま止まります。高学年の子の隣に座り続けると、見張られていると受け取ります。 どちらも、関わり方と学年がずれているだけです。

① 隣に座る(目安:低学年ごろ)
実際に隣の椅子に座り、「じゃあ、1問目は一緒にやろうか」と声をかけて、最初の1問だけ一緒に鉛筆を動かします。 2問目からは、隣で見ているだけにします。親が教える時間ではなく、一人で座っていられる時間を一緒に作る段階です。
② 近くにいる(目安:中学年ごろ)
同じ部屋の少し離れた場所で、家事などをしながら見守ります。声をかけるのは「分からない問題は、印をつけて飛ばしておいていいよ。あとで聞くね」の一言だけ。手は出しません。 印のついた問題は、終わってから、前半の手順で教科書を開いて確かめます。
③ 任せて確かめる(目安:高学年ごろ)
やる時刻や順番は本人に決めてもらい、親は結果だけを確かめます。 確かめるのは、「今日の分、終わった?」の一言と、提出するものが出ているかどうかの2点です。やり方や中身には、本人から聞かれない限り口を出しません。
次の段階へ移るときは、一度に離れないでください。 週のうち何日かを次の段階にして、様子を見ます。うまくいかなければ、1つ前の段階に戻してかまいません。戻すのは失敗ではなく、移り方の調整です。
学年はあくまで目安です。お子さんのペースに合わせて、前後してかまいません。
指導事例:全国家庭教師協会の指導現場では、高学年になったのを機に「もう一人でやりなさい」と一度に手を離したところ、宿題が出なくなったご家庭がありました。いったん同じ部屋で見守る段階に戻し、やる時刻だけを本人に決めてもらうところから、任せる範囲を少しずつ広げていきました。ポイントは、段階を1つずつ踏んだことでした。(※指導事例は個人が特定されないよう内容の一部を変えています。結果を保証するものではありません)
中学に上がると、③の「任せて確かめる」が関わり方の基本になります。中学生になってから、自分から机に向かう形をどう作るかは、中学生になってからの、自分から机に向かう仕組みの作り方にまとめています。
ここまでご家庭でやってみても動かないとき、無理をして抱え込む必要はありません。
家庭だけで難しいとき——学校の先生・外の手の借り方
① まず、学校の担任の先生に。
家での様子と、学校での様子は違うことがあります。「家では宿題に手がつかないのですが、学校の授業ではどうでしょうか」と、連絡帳や面談で聞いてみてください。 学校に相談すること自体は、珍しいことではありません。
② 担任以外の、学校の先生にも。
学校には、担任の先生のほかに、養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーがいます。朝なかなか起きられない、学校に行きたがらないなど、勉強以外で気になる様子があるときは、そうした先生にも相談できます。
③ 自治体の相談窓口。
多くの自治体には、子どもの学習や生活について相談できる教育相談の窓口があります。お住まいの市区町村のホームページで「教育相談」と調べると見つかります。
④ 外部の学習支援。
学習そのものを外に頼る場合、何を目的に、いつ始めるかは小学生の塾はいつから(目的別の開始時期)で整理しています。
「家の中だけで、なんとかしなくては」と思ったら
小学生の指導内容(勉強習慣づけ・学校授業サポートなど)は、コースページにまとめています。合いそうかを確かめてから、無料体験に進めます。
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よくある質問(FAQ)
何年生から「勉強しない」を心配したほうがいいですか?
学年で線を引くより、低学年・中学年・高学年のどの理由に近いかで見るほうが、実際の様子に合います。心配になった時点で、その段階に合った関わり方を始めてください。
小学生のやる気を出す方法はありますか?
方法はありますが、学年によって効く方法が違います。 探すなら、方法より先に、お子さんがいまどの段階にいるかを見てください。低学年なら時刻と場所、中学年なら分からない単元、高学年なら任せる範囲。動き出すきっかけは、たいていそこにあります。
低学年のうちから、厳しくしつけたほうがいいですか?
厳しさより先に、時刻と場所を決めるほうが効きます。叱って座らせても、翌日には同じやりとりが始まるからです。
小4になって、急に勉強を嫌がるようになりました。「小4の壁」ですか?
そう呼ばれることもある状態です。中学年の章の手順で、分からない単元がないかを確かめてみてください。 単元ごとの確かめ方は、中学年の章で紹介した記事にあります。
きょうだいで、関わり方を変えたほうがいいですか?
変えてかまいません。学年が違えば、いる段階も違います。上のお子さんに任せていることを、下のお子さんに同じようにさせる必要はありません。家族でそろえるのは、宿題の時刻のような「家の決まり」だけで十分です。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|学年に合わせて、手の離し方を変える
- 勉強しない理由は、学年で違います。 低学年は習慣と環境、中学年は「分からない」から離れていること、高学年は自分で決めたい気持ち
- 放っておいて困るのは、中学に上がってから。 テストの範囲、提出物の扱い、数学の最初の単元、家で使える時間が一度に始まります
- 声かけは、叱る言葉を「次にすること」か「感謝」に
- 関わり方は、隣に座る→近くにいる→任せて確かめる、の順に移します
今日できることは1つです。お子さんがいまどの段階にいるかを決めて、今日の宿題の時間に、その段階の関わり方を1回だけ試してください。 低学年なら、隣に座るところからです。
まずは、いまの学習の状況だけ聞かせてください
ここまでの内容は、ご家庭だけで始められます。それでも、「分からない」がどこから来ているのか見当がつかないとき、宿題のたびに言い合いになってしまうときは、外の目を1つ入れるという方法もあります。
1対1の家庭教師なら、学校の教科書に沿って、お子さんがどこで分からなくなったのかを確かめるところから始められます。お話しいただくのは、いまの学習の状況だけで十分です。
話を聞いてみようと思われたときに
相談だけのご利用も歓迎です。
【全国家庭教師協会の実績】 入会後の成績アップ率 96.1%/お客様満足度 97.3%/志望校合格率 97.6%(2025年度・自社調べ)。※学習効果には個人差があり、結果を保証するものではありません。
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