大学受験は塾なしで受かる?科目ごとの判定基準と苦手科目だけ外部

大学受験は塾なしで受かる?科目ごとの判定基準と苦手科目だけ外部 その他

執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。

高3の秋。模試の結果が返ってきて、ほかの科目はそれほど変わらないのに、数学だけが大きく下がっていた。その夜、「全部塾に通わせるべきか、このまま塾なしで乗り切れるのか」と考え込んでいるお母さん・お父さんへ。この記事は、その二択で迷っているご家庭に向けて書いています。

先にひとつお伝えします。実は、その二択の立て方そのものが、途中で崩れます。 大学受験では、塾に「通う/通わない」を家庭まるごとで決める必要はありません。答えは、後半でお伝えする「苦手科目だけ外部」という道です。

もうひとつ。「大学受験で塾なしの割合は◯%」と数字で言い切っている記事もありますが、その数字は、記事によって食い違っています。 なぜそうなるのかも、後ほどお答えします。

まず結論(一問一答)

Q. 大学受験は、塾なしで大丈夫ですか?
A. 家庭まるごとでは決められません。科目ごとに決めます。 同じお子さんの中に、ひとりで回せる科目と、外の手が要る科目が混ざっていることがあるからです。

Q. 何を基準に判断すればいいですか?
A. 材料は4つです。 学校の授業で分かるか/定期テスト・模試の推移/自分で問題集を回せているか/志望大学の出題形式に届くか。これを科目ごとに見ます。

Q. 苦手な科目だけ、外に頼ってもいいのですか?
A. はい、そういう選択肢もあります。 全科目を塾で受けるのでも、全科目を自分で進めるのでもなく、必要な科目の分だけ外に出す組み方です。

Q. 受験方式によって変わりますか?
A. 外に出す科目の優先順位が変わります。 一般選抜・学校推薦型・総合型で、見るべき科目や準備の中身が違うためです。

Q. 一度決めたら、そのままでいいですか?
A. 定期テストと模試が返ってくるたびに、その科目だけ付け直します。 外に出した科目を、独学に戻すこともあります。

——では、なぜ「家庭まるごと」ではなく「科目ごと」なのか。そこから始めます。

大学受験の「塾なし」は、家庭単位ではなく科目単位で決める

「塾なしで大丈夫か」と考えるとき、問いの単位はたいてい家庭になっています。うちは塾に通わせるのか、通わせないのか。けれど大学受験では、この単位が合わないことがあります。

理由は、受験に使う科目の組み合わせが、一人ずつ違うからです。志望する大学・学部や受験方式によって、使う科目も、その配点の重さも変わります。同じクラスでも、数学を大きく使う生徒と、ほとんど使わない生徒がいます。要る支援の範囲は、お子さんが何の科目で受けるかによって決まるのです。

そう考えると、問いは次のように言い換えられます。

「塾に通うか、通わないか」ではなく、「どの科目を、誰と進めるか」。

家庭まるごとの二択で考えると、得意な科目のぶんまで通う時間と費用をかけるか、苦手な科目を抱えたまま独学を続けるか、のどちらかになりがちです。科目ごとに分ければ、そのどちらのずれも小さくできます。

なお、中学生の高校受験は、同じ学年の生徒が同じ教科の範囲を同じ時期に準備する形になりやすく、判断の単位が変わってきます。下のお子さんが中学生なら、高校受験を塾なしで進めるときの判断(中学生向けの記事)を開いてください。

では、科目ごとに何を見て判定すればいいのか。材料は4つに絞れます。

科目ごとの判定——独学で回る科目/外の手が要る科目の見分け方

お手元に、お子さんの直近の模試か定期テストの結果を置いて読んでください。見るのは、科目の行ごとです。

大学受験 塾なしを検討する家庭向けの科目別判定表。学校の授業の理解度・定期テストと模試の推移・問題集を自分で回せているか・志望大学の出題形式への到達度の4つの材料に○△×の印を付け、①か④に×が付いた科目は外の手が要る、②か③だけが気になる科目は独学で回る(まず進め方を見直す)と判定する表。数学・英語・日本史の記入例つき

判定の材料は、次の4つです。どれも性格ではなく、ご家庭で確かめられる行動と結果で見ます。

① 学校の授業で分かるか
授業で扱った例題や課題を、ノートを見ずに解き直せるかで確かめます。「授業は聞いている」「ノートは取っている」だけでは判定できません。

② 定期テスト・模試の推移
1回の点数ではなく、直近2〜3回の向きを見ます。上がっているか、横ばいか、下がっているか。1回だけ下がった結果で判定を動かさないためです。

③ 自分で問題集を回せているか
決めた範囲まで自分で進められているか、そして間違えた問題に戻って解き直しているか。進んでいても、間違いに戻っていなければ「回せている」とは言えません。

④ 志望大学の出題形式に届くか
記述か選択か、試験時間はどれくらいか。志望大学の過去問の形式で解けるかを見ます。使う科目と配点は大学の募集要項で、出題の形式は過去問で確かめてください。

印は、○(できている)/△(一部できていない)/×(できていない)の3種類で足ります。

読み方は、次の2つです。

  • ①(授業の理解)か④(出題形式)に×が付いた科目 → 外の手が要る
  • ②(推移)か③(問題集)だけが気になる科目 → 独学で回る(まず進め方を見直す)

ここでいう「②か③だけ」は、①と④に×が無いという意味です。①や④に付いた△は判定を動かさず、次に結果が返ってきたときに×になっていないかを見る目印にします(図の日本史の行が、この形です)。

①は、説明を受け直さないと先へ進めない所です。④は、過去問を読む目が要る所です。どちらも、問題集の量を増やすだけでは動きにくい。反対に②と③は、量と順序で手を打てる所なので、家庭の中で見直せる範囲です。

大切なのは、お子さん全体を一つの印で評価しないことです。同じお子さんの中に、○の科目と×の科目が並ぶのは自然なことです。

では、判定表で「外の手が要る」と出た科目を、どう外に出すか。ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。

苦手科目だけ外部に出す組み方——科目の選び方・頻度・学校と独学との役割分担

「全部塾に通う」と「塾なしで全部を自分で」のあいだに、もうひとつ道があります。判定表で「外の手が要る」と出た科目だけを、外に出すという選択肢です。

大学受験の塾なしを検討する家庭向けに、全部塾・苦手科目だけ外部・塾なしの3つの使い方を、時間の使い方・教育費の出方・判定の見直し方の3項目で比較した表。苦手科目だけ外部は、外に出した科目の分だけ時間と教育費が出て、科目ごとに判定を付け直せる一方、境目を家庭で見続ける手間が残ることを注記している

誤解のないように書いておくと、これは両方のいいとこ取りではありません。 必要な範囲だけに絞るという選択です。その代わり、どの科目を外に出し、どの科目を独学で回すかの境目を、ご家庭で見続ける手間が残ります。

科目の選び方

外に出すのは、判定表で①か④に×が付いた科目です。そういう科目が2つ以上ある場合は、一度に全部を出す前に、志望大学の入試で使う科目か、配点が重い科目かで順番を付けます。受験に使わない科目は、基本は学校の授業と独学で回します(例外は、次の受験方式の章でお伝えします)。

頻度

頻度は、①と④のどちらに×が付いたかで決まります。①(授業の理解)が×なら、学校の授業の進みに合わせて、分からない単元が出るたびに見てもらう形。④(出題形式)が×なら、過去問を解いたあとの見直しに合わせて。何のために外に出すのかが決まっていれば、回数も自然に決まってきます。

学校と独学との役割分担

  • 学校:範囲と進度。定期テストと提出物
  • 独学:問題集を回すこと、覚えること、解き直し
  • 外部:①(授業の理解)か④(出題形式)で×が付いた所だけ

ポイントは、外に出す時間でやることを、①か④の×に絞ることです。②や③に×が付いていても、そこは外に出す時間ではなく、家庭で進め方を見直す所です。外に出した科目でも、問題集を回すのは本人の役目のまま残します。

学年による違い

高1・高2のうちは、①(授業の理解)で止まっている科目を早めに外に出すことが中心になります。高3になると、④(出題形式)に合わせるための外部が中心になります。学年ごとに何が動くのか(単位・評定・受験方式)は、勉強しない高校生の、学年ごとに次に動く数字で整理しています。

お子さんが「全部じゃなくて、数学の応用問題のところだけ、誰かに見てもらえたら」と口にしたら、それはこの組み方を考えるきっかけです。

ただし、外に出す科目の優先順位は、受験方式によって変わります。

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受験方式で変わる「外に出す科目」——一般選抜/学校推薦型/総合型

ここでは制度の解説はしません。方式によって、判定表のどの行を先に見るかが変わるという点だけをお伝えします。方式ごとの条件は、大学の募集要項と高校の進路指導で確かめてください。

一般選抜
使う科目と配点は、大学・学部ごとに決まっています。志望大学で使う科目のうち、配点が重く、判定で「外の手が要る」と出た科目から外に出します。使わない科目の行は、優先度が下がります。

学校推薦型選抜
出願の条件として評定平均が示される場合、その数字には受験で使わない科目の成績も含まれることがあります。つまり、学校推薦型を考えるなら、受験で使わない科目の行も判定表に足し、①(授業の理解)に×が付いた科目は、受験科目でなくても外に出す候補に入れます。評定平均の計算は、指定校推薦で使われる評定平均の出し方にまとめています。

総合型選抜
書類・面接・小論文など、科目の点数以外の準備が加わることがあります。何が課されるかは大学ごとに違うため、外に出すものが科目とは限りません。まず募集要項で、何が求められているかを確かめてください。

「推薦なら塾は要らないのでは」と聞かれることがあります。方式によって必要な準備の中身が変わるだけで、一律に要る・要らないとは言えません。どの方式でも、判定表の見方は同じです。

制度そのものの説明は、学校推薦型選抜のうち、公募推薦の仕組みと出願時期にまとめています。

判定は、一度決めたら終わりではありません。次に見直すのは、いつか。

判定を付け直すタイミング——定期テストと模試が返ってきたとき

判定表を付け直すのは、結果が返ってきたときです。お手元の判定表で、次のように見てください。

定期テストが返ってきたときは、主に①(授業の理解)と②(推移)の印を付け直します。模試が返ってきたときは、主に②(推移)と④(出題形式)の印です。

付け直すときの決まりは、2つだけです。

  1. 付け直すのは、返ってきた科目の行だけ。 1科目の結果に引っ張られて、ほかの科目の判定まで動かさないためです。数学が下がった日に、全科目を外に出す話を始めないでください
  2. 点数だけで判定を変えない。 点数が下がって②の印が×になっても、①と④に×が無ければ、判定は「独学で回る」のままです。判定が変わるのは、①か④に×が付いたとき、または×が消えたときだけです

これは、外に出す方向にも、戻す方向にも使えます。外に出していた科目で①と④から×が消えたら、独学に戻すという選択もできます。外に出す科目は、増えていくだけのものではありません。

一方、赤点が出た科目は、判定より先に確かめることがあります。進級に関わることがあるためです。赤点を取ったときの進級の基準と、学年末までにすることを先に開いてください。

では、この判定表を、親はどうお子さんと一緒に使えばいいのか。

保護者ができること——教育費の枠と、判定表を一緒に付ける

保護者の役割は、2つに絞ります。教育費の枠を先に決めることと、判定表をお子さんと一緒に付けることです。

① 教育費の枠を先に決める

何科目を外に出せるかは、判定表だけでは決まりません。ご家庭の教育費の枠で決まります。順番は、枠が先、科目があとです。先に1年間の上限を決めておけば、「外の手が要る」科目が増えたときも、枠の中で優先順位を付ける話し合いになり、家計と判定がぶつかりません。

枠を決めるときは、いま出ていくお金だけでなく、次の段階でまとまって出ていくお金と並べて見るのがコツです。この考え方は、中学の塾代と、高校入学時にかかるお金を並べて見る考え方(中学生向けの記事)で詳しく書いています。高校生のご家庭なら、並べる相手が、大学に進むときにかかるお金に変わります。

② 判定表を一緒に付ける

判定表は、親が一人で付けるものではありません。4つの材料のうち、①(授業の理解)・③(問題集)・④(出題形式)は、本人が解いてみないと分かりません。 保護者が見られるのは②の結果の紙です。ですから、印は本人が付け、保護者は結果の紙をそろえる役に回るのが自然です。

切り出すなら、結果が返ってきた日です。たとえば、こんな言い方があります。

「模試の結果、一緒に見てもいい? 数学のところだけ、この表の4つの欄に、自分で印を付けてみない?」

言い回しはそのまま使わず、ご家庭のふだんの言葉に置き換えてください。大切なのは、「塾に行くかどうか」の話から入らないことです。科目の話から入れば、お子さんにとっても「自分全体を評価された」話になりません。

よくある質問(FAQ)

大学受験で塾なしの割合はどれくらいですか?

大学受験を控えた学年に絞った割合を、数字で言い切れる一次資料は見当たりません。 割合を示している記事はありますが、記事によって数値が食い違っていて、出典・年度・対象学年もそろっていません。出典として挙げられることのある文部科学省の「子供の学習費調査」は、家庭が学校外の学習にいくら支出したかを調べたものです。1年間に塾代の支出があったかどうかの割合も載っていますが、高校(全日制)の全学年をまとめた数字で、いま塾に通っている生徒の割合や、受験学年だけの割合を示すものではありません。大切なのは割合そのものより、お子さんの科目ごとの状態です。

塾なしは、完全に独学と同じ意味ですか?

いいえ。 塾に通っていなくても、苦手な科目だけ家庭教師など外の手を借りているご家庭もあります。この記事の比べ方(図解②)では、「塾なし」を全科目を自分で進める形の意味で使い、外の手を借りる形は「苦手科目だけ外部」として分けています。世の中で「塾なし」と言うときは、両方を含むことがあります。大切なのは呼び方ではなく、何を、どこまで外に任せるかです。

学校推薦型選抜や総合型選抜なら、塾なしでも大丈夫ですか?

方式によって必要な準備の中身は変わりますが、「推薦なら一律に要らない」とは言えません。 評定平均が条件になる場合は受験で使わない科目の成績も関わることがあり、総合型では科目以外の準備が加わることがあります。条件は、高校の進路指導と大学の募集要項で確かめてください。

浪人生の場合も、同じ考え方でいいですか?

科目ごとに判定する考え方は同じです。 ただ、高校の授業と定期テストが無くなるので、①は使っている参考書や講義で分かるか、②は模試の推移で見ることになります。生活のリズムも現役生とは変わるため、判定を付け直す間隔を短めに取るのがおすすめです。

何年生から、この判定を始めればいいですか?

学年を問わず、結果が返ってきたときから始められます。 特に、受験方式を決める前に一度、科目ごとに付けておくと、その後の組み方を考えやすくなります。

そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。

まとめ|家庭単位ではなく、科目ごとに決める

見るべきなのは、世の中の割合ではなく、お子さんの科目ごとの判定です。

  • 大学受験の「塾なし」は、家庭まるごとではなく科目ごとに決めます。 塾なしの割合を示す数字は記事によって食い違っていて、判断の材料にはなりません
  • 判定の材料は4つ。 ①学校の授業で分かるか/②定期テスト・模試の推移/③自分で問題集を回せているか/④志望大学の出題形式に届くか
  • ①か④に×が付いた科目だけを外に出すという選択肢があります。全部塾でも全部独学でもなく、必要な範囲だけに絞る組み方です
  • 外に出す科目の優先順位は、受験方式で変わります。 条件は大学の募集要項と高校の進路指導で確かめてください
  • 判定は、定期テストと模試が返ってくるたびに、その科目の行だけ付け直します

今夜できることは1つです。お子さんの直近の結果の紙を1枚、机の上に出しておいてください。 判定表は、そこから始まります。

苦手科目だけの相談も、まるごとの相談も

ここまでの判定は、ご家庭だけでも進められます。ただ、科目ごとに「どこまで外部に任せるか」を一緒に考える相手がいると、判定に迷う科目が出たときの見立てが1つ増えます。

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