執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年・志望校選び/学習計画/進路相談)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。
第一志望はほぼ固まった。けれど、私立をどこにするか、何校受けるかが決まらない——11月の三者面談を前に、いちばん多くいただくご相談です。
滑り止めというと「受かるところを1つ確保しておく」というイメージがあります。ですが、実務でつまずくのはそこではありません。本当に気をつけるべきなのは、受かった後の話です。ここを外すと、2月に家族で困ることになります。詳しくは記事の後半でお伝えします。
なお、私立高校の入試の仕組みは、都道府県や学校によって呼び方も内容も違います。「併願優遇」「個別相談」といった仕組みは主に首都圏の私立で使われるもので、全国どこでも同じではありません。この記事ではどの地域でも共通する考え方を軸にお伝えしますので、具体的な制度は必ず志望校の募集要項と中学校の進路指導で確認してください。
この記事では、①単願・併願・併願優遇の違い、②受験校を4層で組む考え方、③何校受けるかの目安、④日程と費用の落とし穴、⑤11月〜1月の決定スケジュールを、順にお伝えします。
まず結論(一問一答)
Q. 併願って、そもそも何?
A. 「合格しても、他校に進学してよい」受け方です。対して単願(専願)は「合格したら必ず入学する」約束で受けます。
Q. 単願のほうが有利って本当?
A. 多くの学校で、単願は合格基準がやや緩やかに設定されています。ただし辞退できません。第一志望が公立なら選べない選択肢です。
Q. 何校受けるのが普通?
A. 公立が第一志望なら私立1〜2校、私立が第一志望なら2〜3校が一般的です。日程が重ならなければ何校でも受けられますが、増やすほど負担も増えます。
Q. 滑り止めはどう選べばいい?
A. 「受かりそうか」だけで選ばないことです。そこに3年間通うことになっても納得できるかが基準になります。
Q. いつまでに決める?
A. 12月の三者面談までが目安です。11月の模試結果と2学期の内申が出そろってから、最終確認をします。
単願・併願・併願優遇——言葉の整理から
まず、混同されやすい3つを整理します。
単願(専願)
「合格したら必ず入学します」という約束で受験する方式です。学校側は入学者を確実に見込めるため、合格の基準がやや緩やかに設定されることが多いです。第一志望が私立で固まっている場合の選択肢になります。
併願
「合格しても、他校に進学する可能性があります」という前提で受験する方式です。公立が第一志望のご家庭は、基本的にこちらです。
併願優遇(学校によって呼び方が異なります)
主に首都圏の私立で見られる仕組みで、内申点などの基準を満たしていれば、事前の相談を経て合格の可能性が高い状態で出願できるというものです。12月頃に行われる「個別相談」で、学校側と基準を確認するのが一般的です。

重要なのは、この仕組みが地域によってまったく違うことです。「併願優遇」という言葉自体がない地域も多くあります。お住まいの都道府県でどうなっているかは、中学校の進路指導の先生がいちばん正確です。三者面談の場で必ず確認してください。
受験校は「4層」で組む
受験校は、合格の可能性で4つの層に分けて考えると整理できます。
第1層:チャレンジ校(現在の学力より上。届けば嬉しい)
第2層:実力相応校(模試の判定でB〜C。第一志望になりやすい)
第3層:安全校(判定A。落ちる可能性は低いが、ゼロではない)
第4層:確実校(内申基準などで、ほぼ合格が見込める)

公立が第一志望の場合は、第2層に公立本命、第4層に私立1校という組み方が基本形です。学力に不安がある場合や、公立の倍率が高い地域では、第3層にもう1校加えます。
私立が第一志望の場合は、第2層と第3層に私立を置き、必要に応じて第1層のチャレンジを1校。この場合、第一志望を単願で受けるかどうかが大きな判断になります。
4層すべてを埋める必要はありません。大切なのは、第4層(確実校)が必ず1つあることです。ここが空いていると、2月に行き先がなくなるリスクを抱えたまま本番を迎えることになります。
判定の読み方に迷ったら、模試の偏差値の見方もあわせてご覧ください。判定はその模試の母集団での位置なので、模試をまたいで比べないことが前提になります。
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何校受けるか——増やすほど良いわけではない理由
日程が重ならなければ、私立は何校でも受験できます。ただ、校数を増やすことには確実にコストがあります。
- 受験料が校数分かかります(金額は学校ごとに異なります)
- 入試当日の体力を消耗します。1月に3〜4回の本番があると、公立本番前に疲れが残ります
- 過去問対策の時間が分散します。出題傾向は学校ごとに違うため、校数が増えるほど1校あたりの準備が薄くなります
このため、公立第一志望なら私立1〜2校、私立第一志望なら2〜3校が現実的な範囲です。「不安だから増やす」で5校6校と受けると、いちばん大事な本番の前に消耗するという本末転倒が起きます。
滑り止めで本当に気をつけること——「受かった後」の話
冒頭でお伝えした、実務でいちばんつまずく点です。
滑り止めは、合格したら実際に通う可能性がある学校です。
当たり前のようですが、「受かりそうだから」だけで選ばれた学校は、いざ第一志望が不合格だったときに、家族の誰も納得できません。2月のいちばんつらいタイミングで、「この学校には行きたくない」という話が始まってしまう。これが最も避けたい事態です。
ですから、滑り止めを選ぶときは、次の3つを必ず確認してください。
① 通学が現実的か
毎日の通学時間と乗り換え。冬の朝、その時間に家を出られるか。
② 3年後の進路が見えるか
卒業生の進路(進学・就職の傾向)。お子さんが考えている方向と大きくずれていないか。
③ お子さん本人が校舎を見ているか
これがいちばん大切です。説明会・見学に一度も行っていない学校は、滑り止めに入れない。1回でも足を運んでいれば、2月の受け止め方がまったく違います。
学校選びの基準そのものについては、高校の志望校の決め方で5つのステップにまとめています。
もう1点、実務的な注意です。私立に合格した場合、入学手続きの締切が公立の合格発表より前に来ることがあります。 学校によっては入学金の延納制度がありますが、扱いは学校ごとに違います。募集要項の「入学手続き」の欄を、出願前に必ず読んでください。
指導事例:公立第一志望の中3生で、私立は「受かりそうだから」という理由だけで1校を押さえていたご家庭がありました。11月の面談で「その学校に見学に行きましたか」と伺うと、親子ともに一度も行っていないとのこと。そこで12月の学校説明会に足を運んでいただいたところ、お子さんが理科の実験設備を見て「ここなら通ってもいい」と話したそうです。結果的に第一志望の公立に合格しましたが、1月から2月の家庭の空気がまったく違いました。「万一のときの行き先がある」という状態が、本番の落ち着きにつながっていました。(※個人の事例であり、結果を保証するものではありません)
11月〜1月の決定スケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9〜10月 | 学校説明会・見学に行く(滑り止め候補も必ず含める) |
| 11月 | 模試の結果と2学期の内申が出そろう。候補校を4層に振り分ける |
| 12月 前半 | 三者面談で受験校を相談。地域の制度(併願優遇の有無など)を確認 |
| 12月 中旬 | 私立の個別相談がある地域では、この時期に実施されることが多い |
| 12月末〜1月 | 出願。日程・手続き締切・延納の扱いを募集要項で最終確認 |
| 1月 | 私立入試。結果を見て公立の最終決定 |
9〜10月の学校見学が、実はいちばん効きます。この段階で滑り止め候補まで見ておけば、11月以降の判断が「数字だけ」になりません。
よくある質問(FAQ)
内申点が足りず、併願優遇の基準に届きません。どうすればいいですか?
基準に届かない場合でも、当日の学力試験で判断する入試方式を持つ学校は多くあります。また、2学期の内申がまだ確定していない時期であれば、間に合う可能性もあります。考え方は内申点が足りないと言われたらに整理しました。内申そのものを上げる行動は内申点を上げる方法をご覧ください。
滑り止めは何校あれば安心ですか?
確実校が1校あれば、機能としては足ります。2校3校と増やしても安心感が比例して増えるわけではなく、受験料と当日の負担だけが増えます。不安がある場合は、校数を増やすよりその1校の合格可能性を確実にする方向で考えてください。
子どもが滑り止めの受験を嫌がります。
「行かない学校を受ける意味がわからない」という反応はよくあります。「万一のときの保険」ではなく「本命に集中するための土台」として説明すると、受け止め方が変わることがあります。行き先が決まっていない状態で公立本番を迎えるのは、本人にとっていちばん重い状況です。
併願校の過去問は、どのくらいやればいいですか?
第一志望と同じ量は必要ありません。出題形式と時間配分を体感できれば十分で、1〜2年分が目安です。ただし、確実校であっても1回も解かずに本番に臨むのは避けてください。形式の違いに当日気づくのが、いちばんもったいないパターンです。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|滑り止めは「受かる学校」ではなく「通ってもいい学校」
私立の併願を決めるときのポイントは3つでした。
- 単願・併願・併願優遇の違いを押さえる。ただし制度は地域と学校で違うので、募集要項と中学校の進路指導で確認する
- 受験校は4層で組み、確実校を必ず1つ入れる。校数は公立第一志望なら私立1〜2校が現実的
- 滑り止めは「受かった後」で選ぶ。通学・3年後の進路・本人が校舎を見たか、の3点
そして、9〜10月のうちに滑り止め候補まで見学しておくこと。ここまで済んでいれば、12月の三者面談は「決める場」ではなく「確認する場」になります。
受験校の組み立てから、一緒に考えるなら
受験校の設計は、模試の判定・内申・志望校の入試方式・日程を同時に見ながら決める作業です。学校や塾では全体を横断して相談しにくい、というお声もよくいただきます。
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