私立高校 無償化のデメリット3つ|我が家の負担額を出す4ステップ

私立高校 無償化のデメリット3つ|我が家の負担額を出す4ステップ 高校受験

執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年・志望校選び/学習計画/進路相談)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。

中学3年生の秋。学校説明会でもらった私立高校のパンフレットが、ダイニングテーブルの端に置かれたまま数日たっていませんか。

「無償化になったなら、うちも私立を考えていいのかもしれない」——そう思いながら、実際にいくらかかるのかが分からなくて、まだ夫婦で具体的に話せていない。そんなお母さん・お父さんに向けて書いています。

先に結論をお伝えします。私立高校の「無償化」で、デメリットとして知っておくべきことは3つです。

  1. 支給には上限がある
  2. 対象は授業料だけである
  3. 上乗せの支援は都道府県ごとに異なる

この3つを押さえておけば、入学後に「思っていたのと違った」となることは、まずありません。

ただし、いちばん誤解されているのは45万7,200円という金額そのものではありません。文部科学省の資料には、家計の見通しを左右する一行が書かれています。その一行は、この記事の中盤でお見せします。

「高校無償化」は、実は制度の名前ではありません

まず、呼び方から整理させてください。文部科学省は、自分たちのサイトでこう書いています。

的確な表現としては、授業料を支援する「高等学校等就学支援金」です。

「無償化」は世の中で広く使われている通称で、制度の正式な名前は「高等学校等就学支援金」です。

ここが出発点になります。名前が「授業料を支援する」と言い切っているとおり、この制度が支えるのは授業料であって、高校でかかるお金の全部ではありません。名前のなかに、支援の範囲がすでに書かれているわけです。

「言葉の問題でしょう」と思われるかもしれません。ですが、ここを取り違えたまま進むと、家計の見積もりが実際と数十万円ずれます。 「無償」という言葉から想像するのは、たいてい「高校にかかるお金が要らなくなる」という状態です。一方で制度が実際に用意しているのは、「授業料という特定の費目に、上限つきでお金が入る」という仕組みです。この2つは、家計の計画としてはまったく別物になります。

もうひとつ補足しておくと、この制度は今回の改正で生まれたものではありません。以前から「高等学校等就学支援金」として動いていて、2026年4月に所得制限が撤廃され、対象が大きく広がったというのが今回の変更です。「無償化が始まった」というより、「もともとあった支援の対象が広がった」と捉えるほうが、実態に近くなります。

では、その支援はいくらなのか。ここに、多くのご家庭が読み違える一文があります。

支給されるのは「上限額」ではなく、授業料の実額まで

冒頭でお伝えした「家計の見通しを左右する一行」とは、これです。

授業料が下記に達しない場合には、授業料を限度として就学支援金を支給します。

言い換えると、こうなります。

支給額は、「その学校の授業料」と「上限額」の、低いほうです。

支給額は授業料の実額と上限額の低いほうで決まる

上限額は、区分ごとに決まっています。

区分 年額の上限 月額
公立(全日制) 11万8,800円 9,900円
私立(全日制) 45万7,200円 38,100円
国立 11万5,200円
私立(通信制) 33万7,200円 28,100円

あなたのご家庭で検討している学校の、年間授業料はいくらでしょうか。 募集要項の「学納金」の欄に必ず書かれています。手元になければ、いま学校のサイトで開いてみてください。その数字と、上の上限額を見比べます。

  • 授業料が上限を下回る学校 → 支給されるのは授業料の実額まで。差額が現金で戻ってくるわけではありません
  • 授業料が上限を上回る学校 → 支給は上限額まで。超えた分は自己負担として残ります

ちなみに、全日制私立高校の授業料の全国平均は45万7,331円です(文部科学省「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果」)。上限額の45万7,200円と近い水準に設定されていることが分かります。ただし平均は平均で、平均を上回る学校を選べば、その分は残ります。

年額はぴんと来にくいので、月額でも見ておきます。私立(全日制)の上限45万7,200円は月あたり3万8,100円、公立の11万8,800円は月あたり9,900円です。ご検討中の学校の授業料を12で割って、この金額と比べてみてください。上回っていれば、その差が毎月の自己負担になります。

もうひとつ知っておいていただきたいのが、受け取り方です。就学支援金は保護者の口座に振り込まれるのではなく、学校が代わりに受け取ります(代理受領)。つまり、手元に45万円が入ってくるわけではなく、授業料の請求額がその分少なくなる、という形です。「支援金でほかの費用をまかなう」という組み立てができないのは、このためです。

同じ制度なのに、住んでいる都道府県で手元に残る額が変わることがあります。理由は、制度の「内側」ではなく「外側」にあります。

2026年4月から何が変わったか

改正法は令和8年3月31日に成立し、2026年4月1日に施行されました。変わったのは、主に次の点です。

改正前 改正後(2026年4月〜)
所得制限 あり なし
私立の支給上限 世帯の収入状況で変動 45万7,200円(所得制限なし)
費用の負担 国が10/10 国3/4・都道府県1/4

いちばん大きいのは所得制限の撤廃です。これまでは世帯の収入によって支給額が変わり、一定の収入を超えると対象外でした。それがなくなり、収入にかかわらず同じ上限額が適用されるようになりました。私立を検討するご家庭にとっては、ここが今回いちばん実感の変わるところだと思います。

もうひとつ、あまり報じられていませんが費用の負担のしかたも変わりました。これまで国が10割を負担していたところに、都道府県が4分の1を負担する形が入りました。ご家庭の手続きが変わるわけではありませんが、都道府県が制度の担い手になったという点は、このあとの「上乗せは都道府県ごと」という話につながります。

なお、新制度の対象外となる生徒への経過措置も設けられています。私立高校の例では、年収590万円未満の場合39万6,000円、年収910万円以上の場合11万8,800円という支給限度額です。お子さんがいつ入学するかによって適用される制度が変わります。 今の中2以下のお子さんについては、入学時点でどの制度が適用されるのかを、学校の入試説明会などで確認しておくと安心です。

ここまでは授業料の話です。ただ、私立高校でかかるお金は授業料だけではありませんし、同じ制度なのに、住んでいる場所で話が違ってくる部分もあります。順に見ていきます。

国の制度は全国一律、上乗せは都道府県ごと

「同じ私立なのに、知り合いの家庭とは話が違う」——これが起きる理由は、支援が二層になっているからです。

国の就学支援金・都道府県の上乗せ助成・制度の対象外費用の3レイヤー図

  • 下の層:国の高等学校等就学支援金全国一律。上の表の上限額が、どこに住んでいても同じように適用されます
  • 上の層:都道府県の上乗せ助成都道府県ごとに異なります。独自の助成を設けているところもあれば、そうでないところもあり、金額も要件も同じではありません

つまり、ネットで見かける「実質無償」「うちは全額出た」という話は、その方が住んでいる都道府県の上乗せまで含めた結果であることがあります。国の制度の部分だけは全国共通ですが、そこから先は地域ごとの話です。同じ学校を受ける友人どうしでも住んでいる県が違えば結論が変わるので、人から聞いた金額をそのまま自分の家に当てはめないでください。

この記事では、個別の都道府県の助成額は扱いません。上乗せの有無・金額・条件は年度ごとに見直されるため、記事に書いた時点で古くなるからです。お住まいの都道府県の私学助成をご確認ください。 調べ先は次の2つで足ります。

  • 都道府県のサイト(「〇〇県 私学助成」「〇〇県 授業料軽減」などで探せます)
  • 志望校の事務室・入試説明会(その学校に通う場合に使える制度をまとめて案内しています)

あわせて、高校生等奨学給付金という別の制度もあります。こちらは授業料以外の教育費を支援するものですが、生活保護世帯・非課税世帯が対象で、各都道府県において制度の詳細は異なります。該当しそうな場合は、こちらもお住まいの都道府県で確認してみてください。

就学支援金の対象にならない費用

ここからは、パンフレットを開きながら読んでいただくと早く終わります。就学支援金が支えるのは授業料です。次の項目は、対象の外にあります。

  • 入学金
  • 施設設備費
  • 教材費
  • 制服・指定用品
  • 修学旅行の積立
  • PTA会費・後援会費
  • 通学定期代

金額は学校ごとに異なります。ご検討中の学校の募集要項に、項目ごとの金額が記載されています。

参考までに、全日制私立高校の全国平均では、入学料が16万5,898円、施設整備費等が15万7,232円、授業料と合わせた初年度納付金の合計が78万460円です(同じく文部科学省「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果」)。このうち就学支援金が支える部分は、授業料にあたるところだけです。

支払いのタイミングも分けて考えておくと、見通しが立てやすくなります。

  • 入学前にまとまって出るもの:入学金、施設設備費、制服・指定用品、教科書・教材
  • 毎年かかるもの:授業料、学校納付金、通学定期代
  • 学年の途中で出るもの:修学旅行の積立、教科外活動の費用

就学支援金は授業料に充てられるものなので、入学前にまとまって出ていく部分は、制度とは別に用意しておく必要があります。 ここが「無償化」という言葉から受ける印象といちばんずれるところかもしれません。

私立高校の学費の実額と内訳、そして3年間でいくらになるのかは、私立高校の学費の記事で項目ごとにまとめています。

入学金や受験料が受験のどの段階で、いつまでに必要になるかは、受験のときに先に出ていく費用で時系列にまとめています。

では、我が家の場合はいくらになるのか。授業料の自己負担を出すのに必要な数字は2つだけで、そこに授業料以外を足せば全体が見えます。紙1枚で出せます。

我が家の負担額を出す4ステップ

では、実際に出してみましょう。電卓と、募集要項の1ページだけあれば足ります。

  1. 募集要項で、その学校の「年間授業料」を確認する
  2. 上限額と見比べて、低いほうが支給額(私立全日制なら45万7,200円)
  3. 授業料 − 支給額 = 授業料の自己負担
  4. そこに、前の章で挙げた授業料以外の費用を足す

計算例1(授業料が上限を下回る学校)
年間授業料が42万円なら、上限45万7,200円より低いので、支給額は42万円。授業料の自己負担は0円です。ここで注意していただきたいのは、上限との差額3万7,200円が現金で戻ってくるわけではないこと。あくまで「授業料を限度として」なので、余った枠は他の費目には回りません。入学金・施設設備費・教材費などは、別に用意することになります。

計算例2(授業料が上限を上回る学校)
年間授業料が55万円なら、支給は上限の45万7,200円まで。授業料の自己負担は9万2,800円です。年額で見ると小さく感じるかもしれませんが、3年間では27万8,400円になります。ここに授業料以外の費用が加わります。

計算例3(公立高校の場合)
公立高校の授業料は年11万8,800円が標準で、公立の支給上限も同じ11万8,800円です。したがって授業料の自己負担は0円。ただし、教材費・制服・通学定期代・修学旅行の積立などは、公立でも同じようにかかります。「公立ならお金がかからない」わけでもない、というのが実際のところです。

ここまで出せば、3年間でおおよそいくら必要かの骨格が見えます。授業料の自己負担を3倍し、入学時にまとまって出るもの(入学金・施設設備費・制服・教材)を1回分足して、毎年かかるもの(諸費・通学定期代)を3倍する。この足し算だけで、ご家庭の見通しとしては十分です。

最後に、手続きについて1点だけ。就学支援金は自動では支給されません。 原則として入学時に、必要な書類を学校へ提出する必要があります(オンラインの申請システムを使う場合もあります)。所得を確認するための書類が必要になることもあります。入学手続きの案内に必ず記載がありますので、そこだけは見落とさないでください。 出し忘れると、支給が受けられません。

授業料の見通しが立ったら、次に家計に乗ってくるのは学校の外の学習費です。お子さんの現状に合った進め方だけでも知っておきたい、という段階でしたら、無料の相談からご利用いただけます。

よくある質問

Q. 無償化なのに、なぜお金がかかるのですか?
支援の対象が授業料に限られているためです。入学金・施設設備費・教材費などは制度の外にあり、これまでどおり必要になります。制度の正式名称が「高等学校等就学支援金」であるとおり、支えているのは授業料の部分です。

Q. いつから対象になりますか?
2026年4月1日施行です(令和8年3月31日成立)。お子さんがいつ入学するかで適用される制度が変わるため、中2以下のお子さんは入学時点での確認をおすすめします。

Q. 所得制限は本当にないのですか?
新制度では所得制限はありません。これまで収入によって対象外だったご家庭も対象になりました。

Q. 支援金は家庭に振り込まれますか?
振り込まれません。学校が代わりに受け取ります(代理受領)。実際には、授業料の請求額がその分少なくなる形になります。手元の現金が増えるわけではないので、入学金や制服代を支援金で払う、という組み立てはできません。

Q. 通信制高校も対象ですか?
対象です。私立通信制の支給上限は33万7,200円です。全日制の45万7,200円とは金額が違うので、通信制を検討されている場合はこちらの数字で計算してください。

Q. 手続きは誰が、いつ行いますか?
原則として入学時に、保護者が学校へ書類を提出します。オンラインの申請システムを使う場合もあります。自動では支給されないため、入学手続きの案内は必ず確認してください。

Q. 途中で家計の状況が変わったら、支給も変わりますか?
新制度では所得制限がないため、収入の変動によって対象から外れることはありません。ただし、経過措置が適用される場合など、条件によって扱いが異なることがあります。詳しくは学校または都道府県にご確認ください。

まとめ|授業料は制度が支え、残り2つは家庭が見通す

  • 支給には上限がある。しかも支給されるのは「授業料の実額」と「上限額」の低いほう
  • 対象は授業料だけ。入学金・施設設備費・教材費などは制度の外
  • 上乗せは都道府県ごと。国の部分は全国一律、そこから先は地域の話

授業料は制度が支えます。残りの2つ——上限との差額と、授業料以外の費用——が、ご家庭で見通しておく部分です。ここまで確認できていれば、ご夫婦で具体的に話し合える材料はそろっています。

このあとの検討は、それぞれ別の記事にまとめています。

進学先の見通しが立つと、次に出てくるのは「では、その学校に届くのか」という問いです。お子さんの現在地は、実際に指導してみないと分かりません。

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