高校入試の数学でよく出る問題|頻出単元と、得点源の決め方

高校入試の数学でよく出る問題|頻出単元と、得点源の決め方 数学

執筆・監修:田村 健一先生(数学・理科指導/指導歴12年)
「方程式が苦手」の本当の原因を、2単元手前まで戻って特定するのが得意。

模試や実力テストの数学だけが、いつまでも戻ってこない。答案を開いても途中式がほとんど残っていなくて、どこで手が止まったのかが読み取れない——中3のお子さんが入試の演習や過去問に入り始めた、お母さん・お父さんに向けて書いています。

先に結論をお伝えします。高校入試の数学で出る問題は、数と式(計算中心の小問集合)/関数/図形/確率・データの活用の4分野に集中します。ただし、その一覧を手に入れても点は増えません。点が増えるのは、4分野のうちお子さんが「今から取りに行ける」ものを決めたときです。数学は積み上げの教科で、頻出単元の中には前提が抜けたままだと、今から手を出しても入試までに届かないものが混じっているからです。

この記事では、①「よく出る問題」が全国共通ではない理由、②4分野の頻出テーマと問題例、③記述・証明の部分点、④得点源の決め方、⑤保護者の関わり方をお伝えします。お願いするのは「教えること」ではなく「見分けること」だけです。

ひとつだけ先に。4分野のうち、いちばん話題にされないのに、いちばん取りこぼしが痛いところがあります。それがどこかは、最初の分野で。そしてもうひとつ、「解き方は習ったのに解けない」が続く単元があります。演習量の問題ではなく、原因はその単元の外にあります。地図は記事の後半に用意しました。

  1. まず結論(一問一答)
  2. 「よく出る問題」は都道府県で違う――過去問3年分を自分で数える3ステップ
  3. 小問集合――「配点」の話より先に、ここの取りこぼしを0にする
  4. 関数――問われるのは「グラフの読み取り」と「図形との組み合わせ」
  5. 図形――平面と空間で、必要な準備がまったく違う
  6. 確率・データの活用――前提が浅く、後回しにされやすい
    1. 入試当日までに、何も見ずに書けるようにしておくもの
  7. 記述・証明はどう問われるか――白紙と部分点の分かれ目
    1. 証明は「型」で書く
    2. 「説明しなさい」も記述の一種です
    3. 公的なデータが示していること
  8. 得点源をどう決めるか――「前提が足りている単元」から選ぶ
  9. 「解けない」が続く単元は、入試の演習では直らない
  10. 保護者ができること――解き方ではなく「どこで手が止まったか」を聞く
    1. やらないこと:丸つけ
    2. やること:3つだけ
    3. 親でもできる、2つの見分け方
    4. あるご家庭の話
  11. よくある質問(FAQ)
    1. 数学の問題集は何冊やればいいですか?
    2. 計算ミスが多いのですが、どうすればいいですか?
    3. 図形が苦手です。捨ててもいいですか?
    4. 関数はどこまでやればいいですか?
    5. 中3の今から、何から始めればいいですか?
  12. まとめ|「よく出る単元」より「前提が足りている単元」から
  13. お子さんの数学が「どこで手が止まっているか」を、一緒に確かめませんか
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まず結論(一問一答)

Q. 高校入試の数学では、どんな問題がよく出ますか?
A. 出題は大きく4分野に分かれます。数と式(計算中心の小問集合)/関数/図形(平面・空間)/確率・データの活用です。中学校で学ぶ数学の領域がこの4つで整理されているため、どの都道府県の入試を開いてもこの4つが顔を出します。ただし何問どんな形式で出るかは都道府県と学校で違います。「この単元は◯%出る」という数字を掲げた記事もありますが、集計した年度も方法も書かれていないことがほとんどです。

Q. まず何から手をつけるべきですか?
A. 小問集合です。理由は3つ。①1問あたりが短い ②必要な前提の単元が浅い ③落とした原因が計算ミスなら、新しい単元を勉強しなくても点が戻る。ここが最初の得点源になるという見方は、指導現場でも各社の解説記事でも共通しています。

Q. 図形は苦手なので、捨ててもいいですか?
A. 分野ごと捨てるのはおすすめしません。捨てるなら「分野」ではなく大問の最後の小問です。図形の大問でも、(1)は角度や長さを1回の計算で求めるだけ、という問題がよく置かれています。

Q. 証明は難しいので、飛ばしてもいいですか?
A. 白紙にだけはしないでください。 記述の問題は、最後までたどり着けなくても途中の記述に点が入る採点方式であることが多いからです(採点の基準は都道府県で違うので、志望校の過去問の解答例で確かめてください)。書き出しの2行だけでも、白紙とは結果が変わります。

Q. 「解き方は習ったのに解けない」のはなぜですか?
A. その単元ではなく、その下に敷かれている単元が抜けているからです。三平方の定理は平方根の上に、相似の証明は合同の証明の型の上に乗っています。下が抜けたまま上の演習を増やしても、解けるようにはなりません。

——ただ、この5つの答えには前提があります。そもそも「よく出る問題」は、全国共通ではありません。

「よく出る問題」は都道府県で違う――過去問3年分を自分で数える3ステップ

「高校入試 数学 よく出る問題」と検索すると、頻出単元を並べた記事がいくつも出てきます。中身が似ているのは当然で、中学校で学ぶ数学の範囲そのものが決まっているため、そこから重要なものを選べば顔ぶれは自然に揃います。

問題は、その一覧が「どの都道府県の、どの年度の入試を数えた結果なのか」が書かれていないことです。「出題率◯%」と数字まで示している記事もありますが、集計年度・方法・出典が添えられているものはほとんど見かけません。公立高校の入試問題は都道府県ごとに、私立高校は学校ごとに作られます。同じ「図形」でも、問われ方はこれだけ変わります。

  • 作図(定規とコンパスで作図する問題)が毎年出る入試と、まったく出ない入試
  • 証明を全文書かせる入試と、穴埋め形式で書かせる入試
  • 関数と図形が1つの大問に融合している入試と、別々の大問に分かれている入試

どの形式が中心かで、家庭でやるべき練習は変わります。作図が毎年出るなら作図だけを10問続ける日をつくる価値がありますし、証明が穴埋めなら、全文を書く練習の優先度は下がります。この違いは、一覧を見比べても分かりません。

確実なのは、志望校の過去問を3年分そろえて、自分で数えることです。手順は3つだけです。

  1. 大問ごとに、4分野のどれかを余白に書き込む。 「大問1=小問集合」「大問2=関数」とメモするだけで構いません
  2. 大問ごとの小問の数を数える。 1問あたりにかけられる時間が見えます。配点が印刷されている過去問なら、そこも一緒に見てください
  3. 形式を正の字で数える。 作図/証明(全文・穴埋め)/理由や説明を書く問題/グラフをかく問題が、3年間でそれぞれ何回出たか

3年分あれば、傾向はおおむね見えます。大事なのは、誰かが出した「出題率」を鵜呑みにしないことです。全国の出題単元を公的に集計した統計は、確認した範囲では見当たりません。志望校の過去問という一次情報が手元にあるのに、出所の分からない集計を信じる理由はありません。過去問をいつから、何年分やるかは高校受験の過去問はいつから、何年分やるかで整理しています。

ただ、過去問を数えて分かるのは出題する側の傾向だけです。「うちの子が、そのうちどれを取れるのか」は、そこには書かれていません。 ここからは分野ごとに、「何が出るか」と「それを取りに行くには何が要るか」をセットで見ていきます。

小問集合――「配点」の話より先に、ここの取りこぼしを0にする

まず、4分野の全体像です。

高校入試の数学でよく出る問題を4分野に整理した一覧図。数と式(小問集合)・確率・データの活用・図形・関数のそれぞれの頻出テーマと、1問あたりの短さ・必要な前提の段数・取りに行く順を並べ、小問集合が最も取りこぼしの痛い得点源であることを示した図

志望校の過去問を開くと、多くの場合、独立した短い問題が並んでいる部分があります。これが小問集合です。何問あるか、どこに置かれているかは都道府県で違うので、そこは過去問で確かめてください。

冒頭でお伝えした「いちばん話題にされないのに、いちばん取りこぼしが痛いところ」は、ここです。理由は3つあります。

  • 1問あたりが短い。 前の小問の答えを使う構造ではないので、1問落としても連鎖しません。1問取るのにかかる時間がいちばん短いところです
  • 前提が浅い。 正負の数・文字式(中1)、平方根・展開と因数分解・二次方程式(中3)という計算の幹がつながっていれば解けます
  • 原因が計算ミスなら、新しい単元を勉強しなくても戻る。 理解の不足ではなく、書き方と確認のしかたを変えるだけで戻る失点が混ざっています

よく出る形は、たとえばこういうものです。

【例1|小問集合でよく出る形】
(1) -2² + 6 ÷ (-3) を計算しなさい
(2) √12 - 6 ÷ √3 を計算しなさい
(3) 二次方程式 x² - 5x + 6 = 0 を解きなさい

解き方

  • (1) -2² は「2を2回かけて、その答えにマイナスをつける」なので -4。6 ÷ (-3) = -2 なので -4 + (-2) = -6 です。(-2)²(=4)と読み違えるのが、いちばん多い間違いです
  • (2) √12 = 2√3、6 ÷ √3 = 6√3 ÷ 3 = 2√3 なので、答えは 0。分母に√が残ったまま止まるのは、有理化を1つの手順として覚えていないからです
  • (3) 左辺を因数分解して (x - 2)(x - 3) = 0、よって x = 2, 3。因数分解できる形は、解の公式より速くミスも減ります

小問集合を落としているとき、原因はだいたい符号/かっこと分配法則/約分・通分の3つに分かれます。どれで落としているかを分けるだけで対策は変わりますが、それを見分けるには途中式が残っている必要があります。ここは記事の最後でもう一度触れます。

小問集合が安定してきたら、次は大問の中身です。まずは関数から見ていきます。

関数――問われるのは「グラフの読み取り」と「図形との組み合わせ」

この分野でよく出るのは、グラフから式を読み取る問題、変域、変化の割合、そしてグラフ上の点で三角形をつくって面積を求める問題や、点が図形の辺の上を動く問題です。単独の計算より、座標平面の上で図形と組み合わせて出ることが多いのが特徴です。

【例2|関数でよく出る形】
関数 y = ax² について、x の値が1から3まで増加するときの変化の割合が8である。a の値を求めなさい。

解き方:y = ax² の変化の割合は a × (1 + 3) = 4a。これが8なので a = 2 です。「(yの増加量) ÷ (xの増加量)」から毎回計算しても解けますが、この形を知っていると1行で終わります。

この分野は前提が2段あります。 座標平面の上で関数を扱うには中2の一次関数のグラフが前提で、その下に中1の比例と座標があります。つまり、関数の大問で手が止まっていても、原因が関数そのものにないことがよくあります。

ですから関数は、まず各大問の(1)を確実に取るところから始めてください。融合問題の後半まで取りに行くかどうかは、後半でお伝えする得点帯の考え方で決めます。関数そのものを深く戻す必要がある場合は、記事の後半でまとめて触れます。

関数と並んで大問になりやすいのが図形です。ここは平面と空間で、必要な準備がまったく違います。

図形――平面と空間で、必要な準備がまったく違う

平面図形でよく出るのは、角度を求める問題、合同や相似の証明、円周角の定理を使う問題、三平方の定理を使って長さを求める問題です。空間図形では、表面積・体積を求める問題、立体を切断した断面を考える問題、展開図の上で最短距離を求める問題が並びます。

【例3|図形でよく出る形】
∠B = 90°、AB = 6cm、BC = 8cm の直角三角形ABCがある。頂点Bから斜辺ACに垂線BHを引くとき、BHの長さを求めなさい。

解き方:まず三平方の定理から AC = 10cm です(6² + 8² = 100)。ここからは、三角形ABCの面積を2通りで表すのが型です。6 × 8 ÷ 2 = 24。同じ面積を 10 × BH ÷ 2 とも表せるので、BH = 4.8cm。相似(△ABC ∽ △AHB)でも解けますが、面積を使うほうが手数が少なくて済みます。

平面図形の主要な2つ(相似の証明・三平方の定理)の前提は、2段です。相似の証明を書くには、手前に中2で学ぶ合同の証明の型があり、その下に平行線と角の性質があります。三平方の定理も同じで、手前に中3の平方根があります。平方根が怪しいまま三平方の定理だけを練習しても、答えの形(2√3 など)でほぼ確実に止まります。

一方で、空間図形の表面積・体積は、前提がほとんどありません。中1で学ぶ公式を覚えているかどうかが、そのまま点になるところです。「図形が苦手」とひとくくりにせず、平面と空間を分けるだけで、取れる問題が見つかります。

図形の前提の重さに比べると、次の分野はずいぶん身軽です。

確率・データの活用――前提が浅く、後回しにされやすい

この分野でよく出るのは、樹形図や表を使って場合の数を数え、確率を求める問題(サイコロ、硬貨、袋から玉を取り出す、カードを並べる)、度数分布表やヒストグラムの読み取り、平均値・中央値・最頻値といった代表値、四分位範囲と箱ひげ図、そして中3で学ぶ標本調査です。

【例4|確率でよく出る形】
大小2つのサイコロを同時に投げるとき、出た目の和が7になる確率を求めなさい。

解き方:全部の場合は 6 × 6 = 36通り。和が7になるのは (1,6)(2,5)(3,4)(4,3)(5,2)(6,1) の6通りなので、確率は 6 ÷ 36 = 1/6 です。型は、「大小2つ」と書かれていたら区別して数えること。(1,6) と (6,1) を同じものと数えるのが、いちばん多い間違いです。

この分野を後回しにしているご家庭は少なくありません。ですが前提はほとんど0段で、樹形図の書き方と代表値・四分位数の意味を覚えれば、その日のうちに取れます。投じた時間がいちばん早く点に変わる分野です。

【コラム】親世代の中学数学には無かった単元があります

教科書に箱ひげ図が載っているのを見て「これは高校で習ったのでは」と思われた方——その感覚は正しいのです。四分位範囲と箱ひげ図は、中学校学習指導要領(平成29年〈2017年〉告示)が2021年度(令和3年度)から全面実施されたときに、中2の内容に加わりました。 ご家庭でフォローできなかったのは当然です。しかも覚える量が少なく、問われ方が安定しているところで、手をつけた分だけ確実に点になります。

入試当日までに、何も見ずに書けるようにしておくもの

4分野を通して、覚えていないと解きようがない式と条件をまとめました。理解ではなく、持っているかどうかの話です。

分野 何も見ずに書けるようにしておくもの
数と式 乗法公式((x+a)(x+b) = x²+(a+b)x+ab/(x+a)² = x²+2ax+a²/(x+a)(x-a) = x²-a²)/二次方程式の解の公式
関数 y = ax(比例)・y = ax+b(一次関数)・y = ax² の式の形/傾き=変化の割合/y = ax² の変化の割合=a×(2つのxの和)
平面図形 三角形の合同条件3つ(3組の辺/2組の辺とその間の角/1組の辺とその両端の角)/相似条件3つ(3組の辺の比/2組の辺の比とその間の角/2組の角)/円周角の定理/三平方の定理
空間図形 角錐・円錐の体積=底面積×高さ÷3/球の表面積=4πr²・体積=(4/3)πr³
確率・データ 確率=あてはまる場合の数 ÷ 全部の場合の数/中央値・四分位数の求め方/箱ひげ図の5つの点が何を表すか

この表は、そのまま印刷して机の前に貼っていただいて構いません。「思い出せないもの」に印をつけ、印のついたものだけを毎日1回書く——これだけで、小問集合と図形の(1)の取りこぼしはかなり減ります。

ここまでは、答えが1つに決まる問題の話でした。答案の見た目そのもので点が変わる問題が、まだ残っています。

記述・証明はどう問われるか――白紙と部分点の分かれ目

答案の証明の欄が、まるごと空白になっている。そんなご家庭に、特に読んでいただきたい節です。

まずお伝えしたいのは、白紙で出した答案と、2行だけ書いた答案では、返ってくる点が違うということです。記述の問題は、最後までたどり着けなくても途中の記述に点が入る採点方式であることが多いからです(何をどこまで書けば何点になるかは都道府県で違います。志望校の過去問の解答例と配点表で確かめてください)。「完答できないなら書かない」は、いちばんもったいない判断です。

証明は「型」で書く

相似や合同の証明は、書く順番が決まっています。実は、4行の型です。

  1. どの2つの図形を比べるのかを書く(例:△ABCと△HBAにおいて)
  2. 等しいと言えることを、根拠とセットで書く。2組の角を使う相似なら2つ、合同の証明なら3つです(共通な角だから/仮定より/平行線の錯角は等しいから/同じ弧に対する円周角は等しいから)
  3. 合同条件・相似条件の名前を正しく書く
  4. 結論を書く

【例5|相似の証明でよく出る形】
∠A = 90° の直角三角形ABCで、頂点Aから辺BCに垂線AHを引く。このとき、△ABC ∽ △HBA であることを証明しなさい。

(証明)
△ABCと△HBAにおいて
仮定より ∠BAC = ∠BHA = 90° …①
共通な角だから ∠ABC = ∠HBA …②
①、②より、2組の角がそれぞれ等しいので
△ABC ∽ △HBA

見ていただきたいのは、①も②も、特別なひらめきを使っていないことです。①は問題文の条件を写しただけ、②は図を見て気づいただけ。証明はひらめきではなく手順です。そして①の1行、②の1行、相似条件の1行は、それぞれが独立した記述です。最後まで書けなくても、白紙とは違う結果になります。

「説明しなさい」も記述の一種です

証明のほかに、文字式を使って理由を説明する問題も記述として出ます。こちらも型があります。

例:2けたの自然数と、その十の位と一の位の数を入れかえてできる数の和は、11の倍数になる。この理由を説明しなさい。

(説明) もとの数の十の位を a、一の位を b とすると、もとの数は 10a + b、入れかえた数は 10b + a と表せる。2つの数の和は (10a + b) + (10b + a) = 11a + 11b = 11(a + b)。a + b は整数だから、11(a+b) は11の倍数である。

型は3つ。①文字でおく → ②式を整理する → ③「11×(整数)の形になったから」で結ぶ。多くのお子さんは②までは書けていて、③の一文を書かずに終わっています。そこが減点の位置です。

公的なデータが示していること

参考になる資料があります。東京都教育委員会が公表した「令和8年東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査」では、数学の平均点は60.4点で、前年度と同じでした。同じ資料で示された指導改善の視点には、「条件を適切に読み取り、文字を用いて的確に表現し処理する学習の充実」「図形に関する基礎的・基本的な事項を活用したり、それらを組み合わせて考察したりする学習の充実」が挙げられています(※原文に示された3項目のうち2項目です)。

計算そのものではなく、条件を数式の形に置き換えるところと、図形の基本を使うところで点を落としている——そう読むことができます。これはまさに、この節で見た記述・証明で問われている力です。なお、これは東京都のデータです。お住まいの都道府県の傾向とは限りませんので、そのまま当てはめないでください。

4分野の出方と記述の型が分かっても、全部はやれません。次に決めるのは、そのうち「どれを取りに行くか」です。

得点源をどう決めるか――「前提が足りている単元」から選ぶ

頻出=優先ではありません。 頻出単元の中には、前提が2段抜けていると、今から手を出しても入試までに届かないものがあります。冒頭でお伝えした「解き方は習ったのに解けない」の正体が、これです。原因はその単元ではなく、その下に敷かれた単元にあります。

下の図が、入試の頻出単元がどの単元の上に乗っているかを示した地図です。

高校入試の数学でよく出る問題の前提単元をたどる戻り先の地図。三平方の定理は平方根、相似の証明は合同の証明の型、関数y=ax2は一次関数のグラフ、二次方程式は展開と因数分解というように、入試の頻出単元がどの単元の上に乗っているかを矢印で示し、前提が0〜1段の単元と2段の単元を分けた図

入試でよく出る単元 すぐ下に要るもの さらに下に要るもの 前提の段数
三平方の定理(中3) 平方根(中3) 正負の数・文字式(中1) 2段
相似の証明(中3) 合同の証明の型(中2) 平行線と角の性質(中2) 2段
円周角の定理(中3) 平行線と角・三角形の角(中2) — 1段
二次方程式(中3) 展開・因数分解(中3) 文字式(中1) 2段

※小問集合で出る二次方程式は、因数分解できる形(例1(3))が中心です。この形は展開・因数分解が通っていれば解けます。単元として二次方程式を取りに行くとき(解の公式や複雑な形)だけ、この表の「2段」として下(展開・因数分解 → 文字式)を確かめてください。
| 関数 y = ax²(中3) | 一次関数のグラフ(中2) | 比例・座標(中1) | 2段 |
| 空間図形の体積・表面積(中1) | — | — | 0段 |
| 確率(中2) | 場合の数・樹形図(中2) | — | 0〜1段 |
| 箱ひげ図・四分位範囲(中2) | 代表値・度数分布(中1) | — | 0〜1段 |
| 文字式を使った説明問題(記述) | 文字式の計算(中1) | — | 1段 |

※学年は一般的な進度です。教科書と学校の進度によって前後します。

この地図の使い方は、たった1行です。前提が0〜1段の単元から、得点源を選ぶ。 2段のものは、下が埋まっていることを確かめてからでないと、演習に時間を注いでも点に変わりません。

そのうえで、今のお子さんの得点帯で、どこまで取りに行くかを決めます。ここでいう得点帯は、入試の配点の話ではなく、お子さん自身が模試や過去問で取れている点の話です。

今の得点帯 取りに行く範囲 手を出さない範囲
半分に届いていない 小問集合/確率・データの活用/空間図形の体積・表面積/証明の書き出し2行 関数と図形の融合問題、大問の最後の小問
半分〜7割くらい 上に加えて、各大問の(1)/円周角/証明の完答 空間図形の切断、動点の場合分け
7割を超えている 関数と図形の融合問題/空間図形の後半/記述の完答 —

そして、1度に選ぶのは1つだけにしてください。中3の秋以降に3つも4つも並行させると、どれも半分で終わります。「今週は小問集合の符号ミスだけ」——このくらいの粒度で十分です。

なお、これは数学の中だけの話です。5教科の合計で見れば、数学より短期間で戻せる教科もあります。 理科の頻出分野や社会の頻出テーマは、別の記事で扱っています。数学に時間を注ぐかどうかは、直近の模試の教科別の点を並べてから決めてください。

最後に、保護者の方がよかれと思ってやると、かえって原因が見えなくなる関わり方を1つだけお伝えします。

「解けない」が続く単元は、入試の演習では直らない

その前に、1つだけ補足します。同じ単元で「解けない」が何度も続くなら、それは入試の演習では直りません。原因がその単元ではなく、下に敷かれた単元にあるからです。どの単元がどの順番でつながっていて、どこから戻せばよいかは中学数学のつまずきやすい単元とやり直す順番にまとめています(関数を深く戻したい場合も、こちらが該当します)。3ヶ月単位でどう積み直すかは数学の偏差値を40から60へ上げる単元別ロードマップをご覧ください。

保護者ができること――解き方ではなく「どこで手が止まったか」を聞く

ここまでの内容を、明日お子さんと話してみようと思われた方へ。聞き方だけ、先に決めておいてください。

やらないこと:丸つけ

数学は答えが1つに決まるので、○×は誰でもつけられます。ところが、○×は「なぜ止まったのか」を教えてくれません。同じ×でも、計算ミスの×と前提が抜けている×では、次にやることがまったく違います。

やること:3つだけ

  1. 途中式を消させない。 消しゴムで消えてしまうのは、原因を知るための唯一の証拠です。「間違えた式は、線を1本引いて残しておいて」とだけ伝えてください
  2. 「どこまでは分かった?」と聞く。 解き方は聞かなくて構いません。聞くのは「どこまで進めた?」「どこで手が止まった?」の2つだけです
  3. 解き直しは翌日、同じ問題で。 解説を読んで分かった気になっても、翌日に白紙から解けなければ身についていません

親でもできる、2つの見分け方

途中式さえ残っていれば、数学が分からなくても、次の見分けはつきます。

  • 最後まで式が進んでいて、答えだけが違う → 計算ミス寄りです。符号・かっこ・約分のどれで落としているかを数えれば、演習の中で戻ります
  • 途中で式が止まっている/1行も書けていない → 前提の抜けです。同じ単元の問題をいくら増やしても戻りません。前の地図で、その単元の下に何があるかを確かめてください

どの分野を取りに行くかまでは、ご家庭で決められます。 難しいのはその先——手が止まっている場所の下で、具体的にどの単元が抜けているのかは、答案を見ないと分かりません。

模試の結果の読み方は模試の偏差値と判定の読み方にまとめています。また、入試の点と内申点はセットで効きます。内申点がどう計算されるのかも一度確認しておくと、志望校の判断がぶれません(内申点の計算方法(素内申・換算内申と自分の県の調べ方)にまとめています)。

あるご家庭の話

中3の秋。数学だけが模試で戻らず、「関数ができない」というご本人の言葉を受けて、ご家庭では関数の問題集を繰り返していたそうです。

答案を見せていただくと、関数の大問の(1)は正解していました。手が止まっていたのは、その後の計算で √ が出てきたところと、小問集合の因数分解です。関数ではなく、平方根と因数分解で止まっていたわけです。取りに行く先を小問集合に切り替え、平方根の計算を毎日10問だけ続けたところ、小問集合の失点が減り、関数の(1)(2)も取れるようになりました。

※個人の事例であり、結果を保証するものではありません。

「関数ができない」という同じ一言でも、原因がグラフの読み取りにある子と、その手前の計算にある子では、取りに行く先がまったく違います。

よくある質問(FAQ)

数学の問題集は何冊やればいいですか?

1冊+志望校の過去問で十分です。 中3の秋以降に冊数を増やすと、どれも半分で終わります。1周目は間違えた問題に印をつけるため、2周目は印のついた問題だけを解くため、と役割を分けてください。手持ちの学校のワークで足ります。

計算ミスが多いのですが、どうすればいいですか?

ミスの「型」を3つに分けて数えてください。 符号、かっこと分配法則、約分・通分。どれが多いかはお子さんによってはっきり偏ります。型が分かれば、対策は「その型が出る問題を、途中式を省かずに10問」だけです。「気をつける」という対策は効きません。

図形が苦手です。捨ててもいいですか?

分野ごと捨てるのは避けてください。 空間図形の体積・表面積は前提がほとんどなく、公式を覚えれば取れます。平面図形も、大問の(1)や証明の書き出しの2行は取りに行けます。捨てるとしたら「大問の最後の小問」です。

関数はどこまでやればいいですか?

まずは各大問の(1)を確実に取るところまでです。 グラフから式を求める、点の座標を求める、といった1段の作業で終わる問題が置かれていることが多く、前提が整っていれば取れます。その先に進むかどうかは、今の得点帯で決めてください。

中3の今から、何から始めればいいですか?

志望校の過去問を1年分、時間を計らずに解いてください。 そのうえで、落とした問題を4分野に振り分けます。目的は点数を見ることではなく、どの分野で落としているかを分けることです。ここまでできれば、この記事の地図と得点帯の表で、次に取りに行く1つが決まります。

そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。

まとめ|「よく出る単元」より「前提が足りている単元」から

  • 出るのは4分野。 数と式(小問集合)・関数・図形・確率・データの活用です。ただし何問どんな形式で出るかは都道府県で違うので、志望校の過去問3年分で数えてください
  • 頻出=優先ではありません。 前提が2段抜けている単元は、今から演習を増やしても点に変わりません。前提が0〜1段の単元から得点源を選ぶのが最短です
  • 親の役割は丸つけではありません。 途中式を残させて、「どこまで分かった?」と聞く。式が進んでいれば計算ミス寄り、途中で止まっていれば前提の抜けです

中3の秋に必要なのは、全部やり切ることではなく、取りに行く1つを決めることです。今日できるのは1つだけ。お子さんの直近の答案を1枚開いて、途中式がどこで止まっているかを見てください。

お子さんの数学が「どこで手が止まっているか」を、一緒に確かめませんか

どの分野を取りに行くかまでは、ご家庭でも今日決められます。難しいのはその先——手が止まっている場所の下に、どの単元が抜けているのかを特定するところです。これは、答案の途中式を見ないと分かりません。

1対1の家庭教師なら、直近の模試や実力テストの答案から、前提の抜けを特定するところから始められます。まずは無料体験で、お子さんの数学がどこで手が止まっているかを確かめてみませんか。入力は30秒、費用はかかりません。相談だけのご利用も歓迎です。

【全国家庭教師協会の実績】 入会後の成績アップ率 96.1%/お客様満足度 97.3%/志望校合格率 97.6%(2025年度・自社調べ)。※学習効果には個人差があり、結果を保証するものではありません。

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