執筆・監修:田村 健一先生(数学・理科指導/指導歴12年)
「方程式が苦手」の本当の原因を、2単元手前まで戻って特定するのが得意。
一問一答の冊子は、もう半分以上に書き込みがある。用語を聞けばすらすら答える。それなのに、模試の理科だけは返ってくるたびに同じようなところに×が並んでいる——中3のお子さんの答案を前にした、お母さん・お父さんに向けて書いています。
先に結論をお伝えします。高校入試の理科で出るのは、物理・化学・生物・地学の4分野です。ここは、どの都道府県でもおおむね変わりません。変わるのは「聞かれ方」のほうです。同じ「電流」でも、用語を答えるだけの問題と、グラフを読んで計算する問題と、理由を一文で書く問題では、必要な作業がまったく違います。理科の点が動くのは、覚える量を増やしたときではなく、どの聞かれ方で落ちているかが分かったときです。
この記事では、①「よく出る」が都道府県で違う理由、②4分野それぞれの頻出単元と、その出方、③4つの出題形式での分け方、④一問一答の使い方、⑤保護者の関わり方を、順にお伝えします。理科を教えられなくても大丈夫です。答案を形式で仕分ける作業は、理科が分からない人ほど落ち着いてできます。
ひとつだけ先に。「一問一答を全部覚えたのに、模試の理科だけが戻らない」というご相談を、毎年いただきます。原因は、覚えた量ではありません。 それが何かは、記事の中ほどでお伝えします。そしてもうひとつ。理科には、多くの記事が同じ説明を書いているのに、その出どころがどこにも書かれていないという話があります。こちらは、次の見出しですぐに。
- まず結論|5つの質問に先にお答えします
- 「よく出る問題」は都道府県で違う――過去問3年分で分野の偏りを数える3ステップ
- 物理の頻出単元と、その出方――計算とグラフで問われる
- 化学の頻出単元と、その出方――実験の場面ごと問われる
- 生物の頻出単元と、その出方――観察と「理由を書く」で問われる
- 地学の頻出単元と、その出方――向きと順序、そして計算
- 出題形式で分けると、対策が変わる――実験考察/グラフ・作図/計算/記述
- 「知識で解ける問題」と「関連付けが要る問題」の見分け方
- 「覚えたのに解けない」が続くときは、暗記の量では戻らない
- 一問一答は「どこで手に入れるか」より「どう使うか」
- 保護者ができること――「一問一答を全部覚えたのに伸びない」の正体
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|理科は「分野」より「形式」で見ると、次にやることが決まる
- お子さんの理科が「知識」と「関連付け」のどちらで止まっているかを、一緒に確かめませんか
まず結論|5つの質問に先にお答えします
Q. 高校入試の理科では、何が出ますか?
A. 物理・化学・生物・地学の4分野から、実験や観察を題材にした問題を中心に出題されます。「理科は4分野から同じくらいの割合で出る」という説明をよく見かけますが、その数字を公表した資料は、確認した範囲では見当たりません。各社が独自に整理した目安が、そのまま引き継がれている状態です。
Q. 理科が苦手です。どの分野から手をつければいいですか?
A. 生物・地学から、という見方が、指導現場でも解説記事でも共通しています。用語と現象を正確に押さえれば答えにたどり着ける問題の比重が、物理・化学より高いためです。ただし志望校の過去問で、分野の偏りを先に確かめてください。
Q. 一問一答は役に立ちますか?
A. 入口としては、いちばん効率のいい形式です。ただし、一問一答で測れるのは「用語を答えられるか」までです。答案には、それでは届かない設問がもう一段あります。
Q. 計算問題は捨ててもいいですか?
A. 捨てないでください。 理科の計算は、問われる型がかなり限られています。オームの法則、反応する物質の質量の比、湿度、震源までの距離——この程度です。数学の計算ほど手数もかかりません。
Q. 記述問題は、何を書けばいいですか?
A. 理由を一文です。「〜だから」で結ぶ形にできれば、多くの設問はそれで足ります。いちばんもったいないのは、書き方が分からずに欄を空けたまま出すことです。
——ただ、この5つの答えには前提があります。そもそも「よく出る問題」は、全国共通ではありません。
「よく出る問題」は都道府県で違う――過去問3年分で分野の偏りを数える3ステップ
「高校入試 理科 よく出る問題」と検索すると、頻出単元を分野ごとに並べた記事がいくつも出てきます。中身はどれも似ています。中学校で学ぶ理科の範囲そのものが学習指導要領で決まっているため、そこから重要なものを選べば、自然と同じ顔ぶれになるからです。
問題は、その先です。多くの記事に「4つの分野から同じくらいの割合で出題される」という一文が置かれていますが、この割合の出どころは、どの記事にも書かれていません。公立高校の入試問題は都道府県ごとに、私立は学校ごとに作られます。それを全国で集計して公表した資料は、確認した範囲では見当たりません。つまりこれは、広く共有されている目安(通説)であって、公表された統計ではないということです。
だからといって、当社が別の割合を出すつもりもありません。同じことをするだけだからです。代わりにお伝えしたいのは、手元の過去問のほうが正確だということです。
もう一点、理科という教科について知っておいていただきたいことがあります。理科は、全国規模の公的なデータが薄い教科です。全国的な学力調査でも、理科は毎回の調査教科に入っているわけではありません。直近で理科が実施された回も、平均正答率ではなくスコアの形での公表に変わりました。「いま全国の中学生が理科でどれくらい取れているか」を、最新の平均正答率として見ることはできません。ネット上の数字が独自集計に寄りやすいのには、こうした背景があります。
いちばん確実なのは、志望校の過去問を3年分そろえて、自分で数えることです。手順は3つだけです。
- 過去問3年分を、大問ごとに4分野へ仕分ける。 物理・化学・生物・地学のどれかを、大問の余白に書き込むだけで構いません
- 大問ごとの小問数を数える。 分野の偏りは、大問の数より小問の数に出ます
- 形式を正の字で数える。 実験の考察/グラフ・作図/計算/記述/用語を答えるだけの問題——この5つで仕分けます。このうち、用語を答えるだけの問題を除いた4つが、この記事で扱う出題形式です
3年分あれば傾向はおおむね見えます。この作業は理科の知識が要りません。設問の指示文(「何というか」「求めよ」「かけ」「書け」)を見れば仕分けられるので、保護者の方でもできます。過去問をいつから、何年分やるかは高校受験の過去問はいつから使うかで整理しています。
先に、4分野の全体像を1枚にしておきます。「どの単元が出るか」と「どの形式で問われるか」を、縦と横で見てください。

ただ、過去問を数えて分かるのは出題する側の傾向だけです。「うちの子がそのうちどれを落としているか」は、そこには書かれていません。 そちらは、記事の後半で扱います。
物理の頻出単元と、その出方――計算とグラフで問われる
物理でよく出るのは、次の単元です。
- 光の反射・屈折(鏡や水面での光の道すじ、凸レンズと像)
- 音(振動数・振幅と、オシロスコープの波形)
- 力・圧力・浮力(力のつり合い、ばねの伸び、水圧)
- 電流と回路(オームの法則、直列と並列、電力と電力量、発熱量)
- 磁界と電磁誘導(電流がつくる磁界、モーターと発電の仕組み)
- 物体の運動と力学的エネルギー(記録タイマー、斜面を下る運動、エネルギーの移り変わり)
物理の出方には、はっきりした偏りがあります。計算とグラフ・作図に寄るのです。電流の単元なら、回路をつなぎ替えて電流計・電圧計の値を測る実験があり、その結果が表かグラフで示され、そこから抵抗や電力量を求めさせる——という流れが定番です。運動の単元なら記録タイマーのテープ、力の単元ならばねの伸びと重さの関係が、そのままグラフになります。
ここで多いのが、「オームの法則は言えるのに点が来ない」という落ち方です。原因は法則を知らないことではなく、その手前にあります。回路のどこが直列で、どこが並列かを図から読み取れていないか、単位をそろえずに代入しているかのどちらかであることがほとんどです。
ご家庭で確かめるなら、聞くのは一言で足ります。「この式、何と何の関係を表してるの?」 式を言えても関係を言えないなら、数値が変わった瞬間に止まります。
物理が「計算とグラフの分野」なら、次の化学は「実験の場面ごと問われる分野」です。
化学の頻出単元と、その出方――実験の場面ごと問われる
化学でよく出るのは、次の単元です。
- 状態変化(沸点・融点、蒸留)
- 水溶液(溶解度、濃度、再結晶)
- 気体の性質と集め方(水上置換・上方置換・下方置換の使い分け)
- 分解と化合(炭酸水素ナトリウムの分解、鉄と硫黄の反応)
- 酸化と還元(酸化銅と炭素の実験)
- 質量保存の法則と、反応する物質の質量の比(グラフで問われる定番)
- イオン・電池・中和・電気分解
化学の特徴は、単元がそのまま「実験の場面」とセットで出ることです。「炭酸水素ナトリウムを加熱する」「うすい塩酸に石灰石を入れる」「塩化銅水溶液に電流を流す」——問題文は、たいていこの形で始まります。そして聞かれるのは、①出てきた物質は何か(用語)、②なぜその操作をするのか(記述)、③反応した物質の質量はいくらか(計算・グラフ)の3点です。1つの実験から、3つの形式が同時に飛んでくると考えてください。
化学式・化学反応式も定番です。ただし、書けること自体より、「何と何が反応して、何ができたか」を式の形で説明できるかが問われます。試験管の口を下げる、火を消す前にガラス管を水から抜く、といった操作の理由もよく聞かれます。これは覚えるというより、実験の目的とつながっているかどうかの問題です。
ご家庭で聞くなら、「その実験、何を確かめるためにやったの?」 の一言です。答えが出てこないときは、用語だけが宙に浮いています。
ここまでの2分野は、覚えただけでは止まりました。次の2分野は逆で、覚えた量がそのまま点になりやすいところです。
生物の頻出単元と、その出方――観察と「理由を書く」で問われる
生物でよく出るのは、次の単元です。
- 植物のつくりと、光合成・呼吸・蒸散(オオカナダモやアジサイを使った対照実験)
- 消化と吸収(だ液のはたらきを調べる実験)
- 血液の循環と呼吸のはたらき
- 感覚器官と神経、刺激と反応
- 細胞分裂(顕微鏡観察、根の先端)
- 遺伝の規則性(純系のかけ合わせ、子と孫の代の現れ方)
- 生物どうしのつながり(食物連鎖、分解者、炭素の循環)
生物の出方は、観察と対照実験の考察、そして理由の記述に寄ります。とくに多いのが対照実験です。「AとBで、変えた条件はひとつだけ」という形で、必ずと言っていいほど「なぜBを用意したのか」を聞かれます。ここは用語では答えられません。比べるためにそろえた条件と、変えた条件を言葉にできるかだけが問われています。
計算は多くありません。遺伝の「比」と、葉の表・裏にワセリンを塗って水の減少量の差から求める蒸散量の計算くらいです。覚えた知識が素直に点になりやすい分野なので、理科全体が苦手なお子さんの入口として勧められるのは、この分野に理由があります。
聞くとしたら、「これ、何と何を比べた実験?」 です。ここに答えられれば、記述問題の骨組みはできています。
生物と並んで得点源になりやすいのが地学です。ただし、ひとつだけ別格に苦手が集まる単元があります。
地学の頻出単元と、その出方――向きと順序、そして計算
地学でよく出るのは、次の単元です。
- 火山と岩石(マグマのねばりけと火山の形、火成岩のつくり)
- 地震(初期微動継続時間、震源までの距離、ゆれの伝わり方)
- 地層と化石(堆積の順序、示相化石・示準化石、柱状図)
- 気象(湿度と飽和水蒸気量、前線の通過と天気の変化、気圧配置)
- 天体(日周運動・年周運動、月の満ち欠け、金星の見え方、季節の変化)
地学の出方は、「向き」と「順序」をモデル図で問う形が中心で、そこに計算が乗ります。地層なら、どの層が先に堆積したか。前線なら、通過の前後で気温と風向がどう変わったか。天体なら、どの方角から、どの向きに見えるか。時間の順序と、見る方向が、地学のほぼすべてです。
計算も定番の型で、地震の初期微動継続時間から震源までの距離と、気象の湿度の2つです。どちらも手順が決まっているので、一度通れば安定します。
別格に苦手が集まるのは、天体です。理由ははっきりしていて、地球の外から見た図と、地上から見上げた図を、頭の中で行き来しなければならないからです。用語を覚えても解けるようにならないのは、そもそも問われているのが用語ではないためです。ここで聞くべき一言は、「これ、どっちから見た図なの?」 になります。
4分野の顔ぶれが見えたところで、同じ単元でも点が取れたり取れなかったりする理由に進みます。分野ではなく、形式の話です。
出題形式で分けると、対策が変わる――実験考察/グラフ・作図/計算/記述
答案の用語を答える問題は合っているのに、その下の「理由を書きなさい」だけが空欄というご家庭に、特に読んでいただきたい節です。
単元が同じでも、形式が変われば別の問題になります。 「電流は分かっているはずなのに点が来ない」のは、電流を知らないからではなく、グラフの読み取りや理由の記述という、別の作業でつまずいているからです。理科の答案を分野で眺めても、この違いは見えません。形式で分けたときだけ見えます。
入試の理科で問われる形式は、大きく4つです。
| 形式 | どう出るか | ここで落ちているときのサイン |
|---|---|---|
| 実験・観察の考察 | 器具の使い方/条件を1つだけ変えた対照実験/「なぜその操作をするのか」 | 用語は答えられるのに、その実験の目的を説明できない |
| グラフ・作図 | グラフを読む/グラフをかく/光の道すじ・力の矢印・回路図をかく | 数値は出せるのに、軸が何を表しているかを言えない |
| 計算 | オームの法則/反応する物質の質量の比/湿度/震源までの距離/速さ・密度 | 公式は言えるのに、単位をそろえる前に代入している |
| 記述 | 理由を一文で書く/実験の結果から言えることを書く | 欄が空白のまま返ってくる |
この4つのうち、いちばん取り返しが早いのは記述です。理由ははっきりしています。白紙で出した答案と、一文書いた答案では、返ってくる点が違うからです。
記述の型は、覚えることが多くありません。「〜だから」で結ぶ一文にする。それだけです。「試験管の口を下げるのはなぜか」なら「発生した水が加熱部分に流れて、試験管が割れるのを防ぐため」。「オオカナダモを入れない試験管を用意したのはなぜか」なら「水草のはたらきによる変化かどうかを確かめるため」。主語と、結び方さえ決まっていれば、書けないことはめったにありません。空欄のままなのは、書けないからではなく、何を書けばいいか教わっていないからであることが多いのです。
グラフ・作図と計算も、実は取り返しが早い側です。型が限られていて、しかも理科の知識とは別の作業だからです。逆に時間がかかるのは実験・観察の考察で、これは覚え直しでは動きません。
形式で分けると、×が同じ場所に固まるご家庭が出てきます。そこが、理科でいちばん差がつくところです。
「知識で解ける問題」と「関連付けが要る問題」の見分け方
冒頭でお伝えした宿題を、ここで回収します。「一問一答を全部覚えたのに、模試の理科だけが戻らない」。この原因は、覚えた量ではありません。
理科の設問は、大きく2種類に分かれます。知識で解ける問題と、関連付けが要る問題です。
- 知識で解ける問題:一問一答の形に直せる設問。「〜を何というか」「この気体は何か」「名称を書け」
- 関連付けが要る問題:2つ以上の情報を結ぶ設問。実験の結果とモデル図、グラフの傾きと粒子のようす、条件を変えた2つの実験の比較、「〜だから〜になる」という因果
一問一答で測れるのは、前者だけです。後者は、覚えた用語を別の情報と結びつける作業なので、用語を何周しても届きません。「全部覚えたのに伸びない」の正体は、たいていここにあります。

親でもできる判定法があります。 問題文からグラフ・図・数値を隠してみてください。 隠しても答えられる設問は、知識で解ける問題です。隠すと答えられなくなる設問は、関連付けが要る問題です。理科の内容が分からなくても、この仕分けはできます。
この見方には、参考になる公的な資料があります。東京都教育委員会が公表した「令和8年東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査」では、理科の平均点が前年度の59.2点から66.7点になり、5教科の中で唯一大きく上がりました(+7.5点)。ところが同じ資料で、指導改善の視点として挙げられているのは、「化学変化をイオンのモデルと関連付けて考察」する学習です(※原文に示された2項目のうち1項目です)。
平均点が大きく上がった年でも、指摘されているのは知識の不足ではありません。 覚えた化学変化と、イオンのモデルとを関連付けて考えるところです。理科で最後に残る差は、覚えた量ではなく、結びつける作業にある——このデータは、そう読めます。なお、これは東京都のデータです。お住まいの都道府県の傾向とは限りませんので、そのまま当てはめないでください。
「覚えたのに解けない」が続くときは、暗記の量では戻らない
同じ単元で「覚えたのに解けない」が何度も続くなら、それは暗記の量では戻りません。理科は、覚えれば取れる分野と、仕組みの理解と計算が要る分野が、ひとつの教科に同居しているためです。同じやり方で全分野を押し切ろうとすると、頭打ちになりやすくなります。分野ごとに何をどう変えるかは、中学理科の4分野の勉強法(暗記と理解の使い分け)にまとめています。
では、一問一答は無駄なのか。そうではありません。使い方を1つ変えるだけです。
一問一答は「どこで手に入れるか」より「どう使うか」
先にお伝えしておきます。一問一答を渡した判断は、間違っていません。 理科は用語の量が多く、入口としては、いちばん効率のいい形式です。問題は使い方のほうです。
どこで手に入れるかは、実はあまり悩まなくて構いません。
- 学校のワークの巻末・章末。範囲が教科書と一致しているので、いちばん無駄がありません
- 教科書の章末。用語の定義がそのまま載っています
- 模試や実力テストの解き直し。間違えた問題だけを集めれば、その子だけの一問一答になります
- 市販のものを足すなら、薄いものを1冊だけ。分厚いものは中3の秋から始めると終わりません
そのうえで、使い方を3つだけ変えてみてください。
- 答えではなく「問題」を覚える。 用語を見て説明できるか、という逆向きで確かめます。「示準化石とは?」に答えられても、「地層が堆積した年代を知る手がかりになる化石を何というか」に答えられないなら、それは順番を覚えているだけです
- 「どの実験の、どの場面で出てきた用語か」を添える。 「還元」なら「酸化銅と炭素を加熱したときの、酸化銅のほうに起きること」。この一言を足すだけで、用語が実験の場面に戻ります。関連付けが要る問題への橋は、ここから架かります
- 一問一答で取れるのは、答案の一部だと知っておく。 全問正解しても、記述と考察の欄は空いたままになり得ます。これは一問一答の欠点ではなく、役割の範囲です
同じ「よく出る問題」でも、教科によって事情は違います。数学は積み上げの教科なので、頻出単元より前提が足りている単元から取りに行くほうが早く、その考え方は高校入試の数学でよく出る問題(頻出単元と得点源の決め方)にまとめました。社会の頻出テーマと、暗記だけでは解けない資料の読み取りについては、高校入試の社会でよく出る問題(地理・歴史・公民の頻出テーマ)にまとめています。
最後に、保護者の方がよかれと思ってやると、かえって原因が見えなくなる関わり方を1つだけお伝えします。
保護者ができること――「一問一答を全部覚えたのに伸びない」の正体
ここまでの内容を、今日の夜にお子さんと確かめてみようと思われた方へ。聞き方だけ、先に決めておいてください。
「全部覚えたのに伸びない」ときに起きていること
点数だけを見ていると、「まだ覚え足りないからだ」と読みたくなります。ところが答案を開くと、知識で解ける問題はほとんど取れていて、×が関連付けの問題だけに固まっていることがよくあります。この状態で用語をもう一周しても、点は動きません。すでに取れているところを、もう一度取りにいっているからです。
やらないこと:用語の読み上げテストで終わらせる
一問一答を親が読み上げて、答えられたら○。この方法は取り組みやすく、親子ともに達成感が残ります。ですが、測れているのは答案の一部だけです。しかも「できた」という実感だけが残るので、模試との差が説明できなくなります。読み上げるなら、用語のほうを言わせる向き(説明を読んで用語を答えるのではなく、用語を見て説明させる)に変えてください。
やること:3つだけ
- 答案の×を、4つの形式に仕分ける。 実験・観察の考察/グラフ・作図/計算/記述。理科が分からなくても、設問の指示文(「何というか」「求めよ」「かけ」「書け」)を見れば仕分けられます。×が一か所に固まっていれば、それが次にやることです
- 「その実験、何を確かめるためにやったの?」と、1問だけ聞く。 用語ではなく目的を聞きます。答えが出てこないなら、用語が実験の場面から切り離されています
- その場で教えない。 ここがいちばん難しいところです。教えてしまうと、次から説明しようとしなくなります。「そこ、あとで一緒に調べよう」で止めてください
形式で仕分けるところまでは、ご家庭でできます。 難しいのはその先です。同じ×でも、用語が抜けているのか、覚えたことを結びつけられていないのかは、答案を見ないと分かりません。
まとまった時間をどう配分するかという考え方は、中3の夏休みの勉強配分に整理しています(夏休みを想定した記事ですが、基礎固め→苦手克服→実戦演習という配分の順序は、まとまった時間が取れるときに使えます)。また、入試の点だけでなく通知表の評定も合否に関わるため、そちらの計算方法は内申点の計算方法(素内申・換算内申と自分の県の調べ方)にまとめています。
あるご家庭の話
中3の秋。理科の一問一答はほとんど答えられるのに、模試の理科だけが戻らないというご相談でした。ご家庭では「まだ覚えが足りない」と考えて、一問一答をもう一周していたそうです。
答案を見せていただき、×を4つの形式に仕分けてみました。用語を答える問題はほぼ正解。×は、「理由を書け」と「グラフから言えることを書け」に固まっていました。そこで一問一答の周回をいったん止め、実験の目的を一文で言う練習に替えたところ、記述の空欄が減り始めました。本人は「何を書けばいいか分かった」と話していました。
※個人の事例であり、結果を保証するものではありません。
同じ「理科が苦手」でも、用語が入っていない子と、用語は入っているのに結びついていない子では、次にやることがまったく違います。仕分けまでは、ご家庭でできます。
よくある質問(FAQ)
理科は暗記だけで足りますか?
分野と形式によります。 生物・地学は、覚えた知識が素直に点になりやすい分野です。一方、物理・化学は計算とグラフ、そして実験の考察が重なるので、用語を覚えただけでは止まります。しかも同じ大問の中に、用語を答える設問と、理由を書く設問が並んでいます。「暗記か理解か」ではなく、両方が同じページに出てくると考えてください。
実験器具の名前まで覚える必要がありますか?
名前だけでなく「何のために使うか」までをセットで押さえてください。 名称そのものより、「なぜその器具を使うのか」を問う設問のほうが多く出ます。ガスバーナー、メスシリンダー、電流計・電圧計のつなぎ方は、教科書の図で確認しておくと安心です。
一問一答は何周すればいいですか?
周回数より、逆から聞けるかどうかです。 用語を見て説明できる状態になっていれば、1周でも足りることがあります。反対に、答えの順番を覚えてしまっている状態は、何周しても模試では出てきません。順番を変えて聞く、ページをランダムに開く、といった工夫のほうが効きます。
計算問題が苦手です。どうすればいいですか?
型が限られているので、型ごとに1問ずつ通してください。 オームの法則、反応する物質の質量の比、湿度、震源までの距離。つまずきの多くは公式ではなく、単位をそろえる前に代入していることです。分・秒、g・kg、cm・mを先にそろえる。それだけで通る問題が増えます。
記述問題は何を書けばいいですか?
理由を一文で、「〜だから」「〜ため」で結んでください。 実験の操作を問われたら「何を防ぐためか」、対照実験を問われたら「何と比べるためか」を書きます。長く書く必要はありません。空欄のまま出さないことが、いちばん大切です。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|理科は「分野」より「形式」で見ると、次にやることが決まる
- 出るのは4分野。ただし何がどれだけ出るかは都道府県で違う。 「同じくらいの割合で出る」という説明に、公表された裏づけは見当たりません。手元の過去問3年分のほうが正確です
- 点が動くのは、分野ではなく形式。 実験・観察の考察/グラフ・作図/計算/記述。同じ単元でも、聞かれ方が変われば別の問題になります
- 知識で落ちているのか、関連付けで落ちているのかを分ける。 グラフ・図・数値を隠しても答えられるかどうかが、その境目です
理科は、覚えた量が点に変わりやすい教科だと思われがちです。実際、入口はそのとおりです。差がつくのは、その先——覚えたことを実験の場面やグラフと結びつけるところにあります。
今日できることは1つだけです。直近の答案を1枚開いて、×が4つの形式のどこに固まっているかを見てください。 そこから先は、この記事の表のとおりに進みます。
お子さんの理科が「知識」と「関連付け」のどちらで止まっているかを、一緒に確かめませんか
答案の×を形式で仕分けるところまでは、ご家庭でも今日できます。難しいのはその先です。同じ×でも、用語が抜けているのか、覚えたことを結びつけられていないのかを見分けるところ。同じ「化学が苦手」でも、原因がイオンの用語にある子と、実験の結果とモデル図を結びつけられない子では、次にやることがまったく違います。これは、答案を見ないと分かりません。
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