執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。
高2の秋、部活の大会がひと区切りついたお子さんを見て、「そろそろ、受験勉強を始めさせたほうがいいのだろうか」と考えたことはありませんか。
「大学受験 勉強 いつから」で検索して、学年別のロードマップを一通り読んでみても、どこか自分の家庭にそのまま当てはまる気がしない——そう感じている保護者の方へ向けて、この記事を書いています。学年別の記事の多くは、高1は基礎固め、高2は演習、高3は過去問、という進み方は教えてくれても、その進み方が、どの受験方式を目指すかによって前提から変わることまでは踏み込んでいません。
実は、「いつから」には、一つの正解がありません。目指す受験方式によって、動き出すべき時期の基準そのものが変わるからです。
そしてもう一つ、多くの保護者が気になる「高2の冬は遅いか」という問いにも、一次資料にもとづいて、この記事の中でお答えします。
まず結論(一問一答)
Q. 大学受験の勉強は、いつから始めればいいですか?
A. 学年だけでなく、目指す受験方式によっても答えが変わります。 基礎を固めるのは早いほど有利ですが、「この学年から始めないと届かない」という一律の基準はありません。
Q. 「高2の冬」から始めるのは遅いですか?
A. 遅いとも早いとも言い切れません。 目指す方式と、いまの基礎の状態によって答えが変わります(くわしくは後述します)。
Q. 何から始めればいいですか?
A. 大きく3つです。 志望の方向性(学部と、目指す方式)を仮に決めること、いまの学力を模試や定期テストで確かめること、学校の年間予定(三者面談・進路説明会の時期)を確認することです(くわしくは後述します)。
——では、なぜ「いつから」に一つの答えがないのか。そこから見ていきます。
「いつから」は受験方式で基準が分かれる——総合型・学校推薦型・一般選抜の時期の違い
大学入試には、大きく分けて一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜という3つの方式があります(文部科学省・令和9年度大学入学者選抜実施要項)。この3つは、出願や結果が出る時期が違うだけでなく、高1・高2のうちに何を積み上げておく必要があるかも違います。「いつから始めるか」という問いに一つの答えが無いのは、突き詰めれば、この3つの方式で「動き出すべき時期」そのものが構造的にずれているからです。

令和9年度(2027年度入学)の実施要項による月単位の目安です。大学・学部ごとの日程は募集要項で確認してください。共通テストの本試験は1月に実施されます。
一般選抜
学力試験の得点を中心に選抜される方式です。3方式の中でもっとも試験の時期が後ろにあり(令和9年度は、共通テストが1月、各大学の個別試験が2月以降)、対策は学力の積み上げが中心になります。学校推薦型・総合型のように評定や活動の記録を出願の材料の中心に置く方式ではないため、日々の授業と定期テストの理解を積み上げていくことが、そのまま土台になります。
学校推薦型選抜
令和9年度(2027年度入学)の実施要項では、出願は11月以降、結果は12月以降と定められています。評定平均が出願条件になる大学があり、評定は高1からの成績の積み重ねです。出し方の詳しい説明は指定校推薦で使われる評定平均の出し方と逆算をご覧ください。学校推薦型選抜の中には「公募推薦」と呼ばれる出願の仕方もあり、その仕組みと指定校推薦との違いは公募推薦の仕組み(指定校推薦との違いと出願時期)で解説しています。
総合型選抜
令和9年度の実施要項では、出願は9月以降、結果は11月以降です。学力試験だけでなく、活動実績や志望理由といった書類・面接の準備に、学力対策とは別の時間がかかります。
つまり、同じ「大学受験の勉強」でも、目指す方式によって、動き出すべき時期の基準そのものが違うのです。では、この違いを踏まえて、学年ごとに何をしていけばいいのでしょうか。
学年ごとに始めること
方式を最終的にどれにするか、高1・高2の時点で決めきっている必要はありません。ただ、学年ごとに「崩さないほうがいいこと」ははっきりしています。
高1
授業と定期テストのリズムを崩さないことが、そのまま基礎固めになります。特に英語・数学は、積み上げ型の教科で、高3になってから一気に取り戻すのが難しい教科です。日々の勉強の回し方は高校生の勉強の回し方——定期テストと日々の勉強で扱っています。
高2
志望する学部・方式の方向性を、仮でいいので考え始める時期です。この時点で学部を確定させておく必要はありません。受験科目の見当がついてくると、その後の計画が立てやすくなります。模試や定期テストの結果から得意・不得意の教科が見えてくると、受験科目の選び方にもつながります。学校推薦型・総合型を考えるなら、評定には高2の成績も積み重なっていくため、定期テストのリズムを崩さないことは高1と同じく大切です。
高3
志望校の出題傾向に合わせて、学力試験の対策を積み上げていく時期です。学校推薦型・総合型を目指す場合は、上で見たとおり高3の秋に出願が来るため、評定や活動の記録は、それより前の学期までの積み重ねで出願することになります。
学年ごとの話をすると、必ず出てくるのが「高2の冬」という一つの時期です。この時期は、遅いのでしょうか。
「高2の冬は遅いか」——目指す方式と、基礎の状態で答えが変わる
結論から言うと、「高2の冬は遅いか」という問いに、遅い・早いの一言では答えられません。ただし、判断材料ははっきりしています。
一般選抜を目指すなら、高2の冬は、選抜全体の時期の中ではまだ早い段階にあたります。試験(共通テストは1月、各大学の個別試験は2月以降)は次の年の冬にあり、ここで遅い・早いを分けるのは、時期よりも、高1・高2の範囲の英語・数学の基礎がどれだけ固まっているかです。一方、学校推薦型・総合型選抜を視野に入れているなら、評定や活動実績はすでに高1から積み上がっているはずの段階にあり、高2の冬から新たに動き出すのでは、材料が足りていない可能性があります。
つまり、「高2の冬」という同じ時期でも、目指す方式によって意味がまったく違うのです。「高2の冬から始める」という同じ一言でも、一般選抜を目指す家庭なら次に確かめるのは基礎の状態、学校推薦型・総合型を目指す家庭なら次に確かめるのはここまでの評定と活動の記録、というように、見るべきものが変わります。

◯・✕の判定ではなく、確認のための表です。
大切なのは、「遅いかどうか」を漠然と心配することではなく、いま何が揃っていて、何が足りないかを、具体的に確かめることです。高1・高2の定期テストで英語・数学の基礎が取れているか。評定の推移を把握できているか。受験科目の見当がついているか。この3つを一つずつ確かめるだけで、次に何をすべきかが見えてきます。漠然とした不安のままにしておくより、この3つの確認のほうが、よほど次の一歩につながります。
では、実際に何から手をつければいいのでしょうか。
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最初にすること——方式の見当・いまの学力の確かめ方・学校の年間予定の確認
最初にやることは、大きく3つに絞れます。
- 志望校・学部と、目指す方式の方向性を、仮に決める(完璧でなくてよい)
- いまの学力を、模試や定期テストの結果で確かめる
- 学校の年間予定(三者面談・進路説明会の時期)を確認する
この3つが整理できると、その後の計画が立てやすくなります。順番を細かく決めすぎるより、まずこの3つを埋めることを優先してください。②は、模試の偏差値の数字そのものより、教科ごとにどこで失点しているかを見るほうが、次の手につながります。③は学校によって時期が違うため、学校の年間行事予定で確かめておくと、次の面談までに何を考えておけばよいかが見えてきます。なお、塾や家庭教師をいつから考えるかは、また別の話です。学年で変わる塾の役割は高校生の塾はいつから(学年で変わる塾の役割)で扱っています。
ここまでは高1・高2向けの話が中心でしたが、「高3から」「部活を引退してから」でも、同じように始められるのでしょうか。
「高3から」「部活を引退してから」でも始められるか——何が揃っていれば進められるか
「高3になってから」「部活を引退してから」でも、始めることはできます。大切なのは、期間ではなく、何が揃っているかです。
具体的には、次の3つを確かめてください。
- 高1・高2の範囲の英語・数学に、大きな抜けがないか
- 受験科目の数(何教科で受けるか)が、ある程度見えているか
- 目指す方式(一般選抜か、学校推薦型・総合型か)が、仮にでも決まっているか
①は、高1・高2の定期テストや模試の答案を見返すと確かめられます。点数そのものより、どの単元で失点が続いているかを見てください。英語なら文法や語彙、数学なら計算や基本の公式のように、ほかの単元の前提になるところで失点が続いているなら、そこが「大きな抜け」です。
②は、志望する学部の募集要項で、受験に使う教科・科目を確かめると見えてきます。受ける教科の数が決まると、限られた時間をどの教科に厚く配るかを決められます。
③は、学校推薦型・総合型を考えるのか、一般選抜に絞るのかで、次に確かめるものが変わります。学校推薦型・総合型なら評定の推移や出願の条件、一般選抜なら学力試験の対策が中心になります。
どれか1つでも「分からない」のままなら、演習の量を増やすより先に、まずそこを埋めてください。
この3つが崩れたまま学力試験の対策だけを積んでも、土台が揺らいだままになります。たとえば、英語・数学の基礎に大きな抜けがある状態で演習量だけを増やしても、解けない問題の種類は変わらないままです。逆に言えば、この3つを具体的に確かめることが、「高3から」「部活を引退してから」を進めるための最初の一歩になります。
なお、科目ごとに、自分で進めるか外の手を借りるかを決める考え方は大学受験で、どの科目を外に出すかの決め方にまとめています。
ここまでは本人が動く話でした。では、保護者としては、何をすればいいのでしょうか。
保護者ができること——方式ごとの出願の時期を先に知っておく
大学受験の勉強そのものは、本人が進めるものです。ただ、保護者が把握しておくと助けになる情報があります。
一つは、方式ごとの出願・結果の時期です。上で見たとおり、学校推薦型選抜・総合型選抜は一般選抜より早く動きます。学校の進路資料や、大学の募集要項に目を通しておくと、本人が「いつまでに何を」を考えるときの助けになります。募集要項には、その大学・学部にどの方式があるか、出願の条件や使う科目、日程が書かれています。志望校の候補が挙がったら、候補ごとに「どの方式があるか」「その方式の出願はいつか」を一覧にしておくと、本人と話すときの材料になります。
高校生の受験で、保護者が関われる範囲は、情報・お金・学校との窓口の3つに整理できます。くわしくは高校生の保護者が関われる3つの窓口(情報・お金・学校)でまとめています。ここでの「情報」の窓口の具体例が、方式ごとの時期の把握です。
よくある質問(FAQ)
志望校が決まっていなくても、大学受験の勉強を始めていいですか?
はい。志望校が決まる前でも、基礎科目の勉強を進めておくことは無駄になりません。学部・方式の方向性は、仮の状態からで大丈夫です。
1日どのくらい勉強すればいいですか?
学年や目指す方式、受験科目の数によって変わるため、一律の時間数ではお答えできません。まずは学校の授業と定期テストのリズムを保つことを基準にしてください。
浪人する場合も、同じ考え方でいいですか?
「方式によって基準が変わる」という考え方そのものは、浪人生にも当てはまります。ただし出願条件・在籍要件は方式や大学によって異なるため、募集要項での確認が必要です。
部活と両立できますか?
部活を続けながら進めるか、引退してから本格化させるかは、部活の引退時期や本人の生活リズムによって異なるため、一律には言えません。引退してから始める場合に確かめたいことは、上の「高3から」「部活を引退してから」の節にまとめています。
共通テストはいつ実施されますか?
令和9年度(2027年度入学)の試験は1月に実施される予定です。日程の詳細は、大学入試センターの発表で確認してください。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|「いつから」に一つの答えはない
「大学受験の勉強はいつから」に、一つの答えはありません。
- 目指す方式によって、動き出すべき時期の基準は変わります
- 「高2の冬」が遅いか早いかも、基礎の状態と目指す方式で決まります
- 学年ごとにできることを積み重ねていくことが、遠回りに見えて一番の近道です
「いつから」に迷ったら、一度相談してみませんか
ここまでの3つの基準——方式・学年・いま揃っているか——は、ご家庭だけでも整理できます。ただ、お子さん一人ひとりの状況に当てはめて考える相手がいると、次の一歩が具体的になります。
相談だけのご利用も歓迎です
【全国家庭教師協会の実績】 入会後の成績アップ率 96.1%/お客様満足度 97.3%/志望校合格率 97.6%(2025年度・自社調べ)。※学習効果には個人差があり、結果を保証するものではありません。



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