執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年・志望校選び/学習計画/進路相談)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。
模試の結果が返ってきた。数字がずらりと並んでいるけれど、どこを見ればいいのか分からない——2学期に入ると、このご相談が一気に増えます。「偏差値52って、いいの?よくないの?」「前回より下がったけど、点数は上がっている。どっち?」
先に結論をお伝えします。偏差値は「平均から、どれだけ離れているか」を表す数字です。点数そのものではなく、平均との距離を測っているので、テストが難しくても簡単でも、同じものさしで自分の位置がわかります。逆に言えば、平均点と一緒に見なければ、偏差値は読めません。
この記事では、①偏差値という数字の意味、②偏差値と「上位何%か」の対応、③模試ごとに偏差値が変わる理由、④判定より先に見るべき2つの数字、⑤9月・11月・1月の時期別の読み方を、順にお伝えします。
まず結論(一問一答)
Q. 偏差値って、結局なにを表す数字?
A. 平均点からの距離です。平均ちょうどが偏差値50で、そこから10上がるごとに「平均より頭ひとつ抜けた」度合いが1段階上がります。点数と違い、テストの難易度に左右されません。
Q. 偏差値60は、上位何%?
A. 目安として上位約16%です(偏差値55で約31%、65で約7%、70で約2%)。300人の模試なら、偏差値60はおよそ48位あたりになります。
Q. 点数は上がったのに偏差値が下がったのはなぜ?
A. 平均点がそれ以上に上がったからです。周りも同じだけ伸びていれば、位置は変わりません。テストが易しかった回にはよく起きます。
Q. 模試によって偏差値が違うのはなぜ?
A. 受けている人の集団(母集団)が違うからです。難関校志望者が多く受ける模試では、同じ学力でも偏差値は低く出ます。模試をまたいで偏差値を比べても意味がありません。
Q. 判定(A〜E)はどこまで信じていい?
A. 現時点の位置を示す目安であって、合否の予告ではありません。判定より、志望校の合格ラインと自分の偏差値の「差」が何ポイントかを見てください。そこが、残り期間でやることを決めます。
偏差値とは?——「平均からどれだけ離れているか」を表す数字
偏差値は、次の式で計算されています。
偏差値 = 50 + 10 ×(自分の得点 − 平均点)÷ 標準偏差
式は覚える必要はありません。押さえておきたいのは2つだけです。
- 平均点ちょうどなら、偏差値は50(何点だったかに関係なく)
- 平均から離れるほど、50から離れる
ここで出てくる「標準偏差」は、点数のばらつきの大きさを表します。全員の点数が団子状態のテスト(ばらつきが小さい)では、平均より10点高いだけで偏差値がぐんと上がります。逆に、点差が大きく開いたテストでは、同じ10点差でも偏差値はあまり動きません。
だからこそ、偏差値は「点数」より正確に自分の位置を教えてくれます。100点満点で60点は、平均が40点なら上位層ですが、平均が80点なら下位層です。点数だけでは判断できないことが、偏差値なら一目でわかります。

偏差値は「上位何%」か——順位に置き換えて読む
偏差値のいちばん実感しやすい読み方は、上位何%かに置き換えることです。目安は次のとおりです(多くの人数が受ける模試で、点数が平均のまわりに集まる分布を前提とした一般的な換算です)。
| 偏差値 | 上位およそ | 300人中の順位(目安) |
|---|---|---|
| 70 | 2% | 7位 |
| 65 | 7% | 20位 |
| 60 | 16% | 48位 |
| 55 | 31% | 93位 |
| 50 | 50% | 150位 |
| 45 | 69% | 207位 |
| 40 | 84% | 252位 |
この表で見ると、偏差値50は「真ん中」であって、悪い数字ではないことがわかります。また、偏差値を5上げるのは、順位で言えばかなりの移動だということも見えてきます。偏差値50から55へは、300人中150位から93位へ——57人を抜く必要があるということです。
「あと5上げよう」という目標が、実際にはどれくらいの移動なのか。ここを親子で共有しておくと、目標が現実的なものに変わります。
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模試が違えば、偏差値も変わる——「母集団」というものさしの違い
保護者の方がいちばん戸惑われるのが、「A模試では偏差値58なのに、B模試では52だった」というケースです。学力が急に落ちたわけではありません。受けている人の集団(母集団)が違うだけです。
偏差値は、その模試を受けた人の中での位置を表します。したがって、
- 難関校志望者が多く集まる模試 → 同じ学力でも偏差値は低めに出ます
- 幅広い層が受ける模試(学校で全員受験するものなど) → 偏差値は高めに出ます
どちらが正しいということはありません。大切なのは、同じ模試の中で、前回と今回を比べることです。模試をまたいで偏差値を比較したり、志望校の合格ラインを別の模試の基準で見たりすると、判断を誤ります。
志望校の「偏差値◯◯」という数字も、どの模試の基準かとセットです。成績表に載っている合格ラインは、その模試の母集団で算出されたもの。ここを取り違えないだけで、志望校選びの精度はかなり上がります(→高校の志望校の決め方)。
判定(A〜E)より先に見るべき2つの数字
成績表を開いて、まず判定を探してしまう——自然なことですが、判定は「現時点の位置」を示す目安であって、合否の予告ではありません。判定の基準(合格可能性の区切り方)は模試によって異なるため、必ず成績表の凡例を確認してください。
判定より先に見ていただきたいのは、次の2つです。
① 志望校の合格ラインと、自分の偏差値の「差」
何ポイント足りないのかが、残り期間でやることを決めます。差が3ポイントなら、いまの勉強の精度を上げる話。10ポイント以上あるなら、戻ってやり直す単元があるという話で、打ち手がまったく変わります。
② 教科別の偏差値のばらつき
5教科の合計だけを見ていると、いちばん伸びしろのある教科を見落とします。たとえば国語60・数学42なら、全体を均等に上げようとするより、数学に時間を寄せたほうが合計は動きます。偏差値がいちばん低い教科が、いちばん伸びしろのある教科です。

さらに一段深く読むなら、設問別の正答率を見てください。「正答率が高いのに自分は落とした問題」——ここが最優先の復習対象です。逆に、正答率が10%台の問題は、いま解けなくても合否には響きません。限られた時間をどこに使うかが、この1枚から決まります。
9月・11月・1月——時期で「見方」は変わる
同じ模試の結果でも、時期によって読み方が変わります。
9月:判定は気にしなくていい。穴を探す回。
2学期に入ったばかりの9月は、未習の単元が残っている時期です。ここでのE判定は、実力不足というより「まだ習っていない」を含んでいます。この時期の模試は、点を取るためではなく、戻る場所を見つけるために受けます(→高校受験の過去問はいつから?)。
11月:志望校を現実的に絞り込む回。
主要範囲が出そろい、判定の精度が上がってきます。ここでの偏差値は、12月の三者面談での話し合いの土台になります。合格ラインとの差が何ポイントかを、教科別に把握しておく時期です。
1月:判定より「本番の形式に慣れたか」。
この時期は、偏差値の上下より、時間配分・見直しの手順・記述の書き方が本番仕様になっているかを見ます。ここまで来たら、新しい単元に手を広げるより、取れる問題を確実に取る練習に切り替えます。
指導事例:9月の模試でE判定が出て、志望校を下げようかとご相談に来られた中3生がいました。成績表を見ると、5教科合計の偏差値は46でしたが、教科別では国語57・英語52・数学38と大きなばらつきがありました。数学の設問別正答率を見ると、落としていたのは正答率60%台の基本問題ばかり。そこで、志望校はそのままに、数学だけを中1の関数まで戻してやり直したところ、11月の模試で数学の偏差値が46まで上がり、5教科合計でも判定が2段階上がりました。下げるべきは志望校ではなく、戻る単元の位置だったという例です。(※個人の事例であり、結果を保証するものではありません)
偏差値が下がったとき、親がまず見るところ
数字が下がっていると、つい「どうして下がったの」と聞きたくなります。ですが、下がった理由の大半は、成績表の中に書いてあります。まず確認したいのは次の順です。
- 平均点は上がっていないか(平均が上がれば、同じ点でも偏差値は下がります)
- 母集団は同じか(前回と違う模試なら、そもそも比較できません)
- どの教科で落ちたか(1教科の失点なら、全体の問題ではありません)
- 落とした問題の正答率(難問を落としたのか、基本を落としたのか)
ここまで見てから、初めて「じゃあ次はどうするか」の話になります。数字を見て気持ちを聞く前に、原因を一緒に探す——この順番だけで、模試の結果は親子ゲンカの種ではなく、次の一手を決める材料に変わります。
よくある質問(FAQ)
偏差値50は、やはり低いのでしょうか?
偏差値50は、受けた人のちょうど真ん中です。低い数字ではありません。ただし、志望校の合格ラインが55なら5ポイント足りない、ということになります。偏差値の良し悪しは、単体ではなく志望校との差で判断してください。
点数は上がったのに偏差値が下がりました。悪くなったということですか?
いいえ。平均点が自分以上に上がった、つまり周りがもっと伸びたということです。テストが易しかった回によく起きます。学力が落ちたわけではありませんが、「周りと同じペースだった」という事実は残るので、次に何を上積みするかを考える材料にはなります。
志望校の偏差値と、模試の偏差値が違うのですが?
志望校の「偏差値◯◯」は、どの模試の基準かで変わります。成績表に載っている合格ラインは、その模試の母集団で算出されたものです。別の模試の数字と混ぜて比べないようにしてください。
偏差値はどれくらいのペースで上がりますか?
教科と、戻る量によります。暗記の比重が大きい教科は、解き直しの仕組みが回り始めれば次の模試から動くことがあります。一方、数学や英語のように積み上げが必要な教科は、手前の単元に戻る時間が必要なため、2〜3か月かけて変化が出るのが一般的です。1回の結果で判断せず、2〜3回の推移で見てください。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|偏差値は「順位」に翻訳して読む
模試の偏差値は、平均からの距離を表す数字です。読み方のポイントは3つでした。
- 偏差値は上位何%かに置き換えて読む(60=上位約16%。5上げるのは順位で見るとかなりの移動)
- 模試をまたいで比べない。母集団が違えば、同じ学力でも数字は変わる
- 判定より、志望校ラインとの差・教科別のばらつき・設問別の正答率
そして9月の模試は、点を取るための回ではなく、戻る場所を見つけるための回です。返ってきた成績表を、もう一度この順番で開いてみてください。次にやることが、1枚の中に書かれています。
お子さんの模試結果の読み方から、一緒に整理するなら
模試の成績表は、情報量が多すぎて「どこから手をつけるか」が見えにくいものです。1対1の家庭教師なら、教科別の偏差値と設問別の正答率から、戻るべき単元と優先順位を具体的に特定し、次の模試までの計画に落とし込めます。志望校を下げるかどうかの判断も、数字を一緒に見ながら決められます。
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