執筆・監修:佐伯 悠介先生(学習コーチ/指導歴8年・学習習慣づくり/不登校・先取り支援)
勉強の前に「机に向かえる仕組み」から。つまずいた子の伴走が専門。
「一度スマホを取り上げたんです。でも、成績は戻りませんでした」——中学生の保護者の方から、この形のご相談を毎年いただきます。取り上げれば勉強するはずだった。けれど実際には、机には向かうけれど手が止まっている、あるいは家の空気が悪くなっただけだった。
取り上げても解決しなかったご家庭には、共通する見落としがあります。 それは記事の後半でお伝えします。
先に、事実の確認から始めましょう。2026年8月4日、文部科学省が令和8年度の全国学力・学習状況調査について記者会見で説明し、「SNSや動画視聴等の利用時間が長い児童生徒ほど、各教科の正答率やスコアが低い傾向」が引き続き見られたことを明らかにしました。
ただし、同じ会見でもうひとつ、逆向きの傾向が示されています。「ICT活用に自信がある児童生徒ほど、各教科の正答率やスコアが高い傾向」です。
つまり、「スマホやタブレットを使うかどうか」ではなく、「何にどう使っているか」で分かれているということです。ここが、ルールを考えるうえでの出発点になります。
この記事では、①中学生の利用時間の実態(最新データ)、②調査が示す2つの逆向きの傾向の読み方、③取り上げても解決しない3つの理由、④わが家のルールの決め方5ステップ、⑤そのまま使えるルール表を、順にお伝えします。
まず結論(一問一答)
Q. 中学生は1日どれくらい使っているの?
A. 平日1日あたりの平均は、13歳で約5時間17分、14歳で約5時間25分です(こども家庭庁・令和7年度調査/機器の合計)。7時間以上使っている子が約4人に1人います。
Q. スマホが成績を下げているということ?
A. 調査で示されているのは傾向(相関)であって、因果関係の証明ではありません。ただし、SNS・動画の時間が長い層ほど正答率が低い傾向は繰り返し確認されています。
Q. 取り上げるのは効果がある?
A. 一時的には時間が空きますが、空いた時間の使い道を決めていないと、勉強には変わりません。詳しくは後述します。
Q. どんなルールがいい?
A. 「1日◯時間まで」より、「いつ・どこで使わないか」を決めるほうが守られます。中学生の保護者で「利用してよい時間や場所を決めている」のは49.4%と、ちょうど半数です。
Q. うちだけが緩いのでは?
A. 中学生の保護者の92.1%が何らかの形で利用を管理しています(フィルタリング58.3%など)。緩い・厳しいより、中身が子どもと共有されているかが分かれ目です。
中学生は1日何時間使っているのか——最新データで見る実態
こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(2026年2月公表・速報)によると、平日1日あたりの平均利用時間(本人が使う機器の合計)は次のとおりです。
| 年齢 | 平均利用時間 | 7時間以上の割合 |
|---|---|---|
| 12歳(中1相当) | 約4時間39分 | — |
| 13歳(中2相当) | 約5時間17分 | 24.0% |
| 14歳(中3相当) | 約5時間25分 | 24.5% |
| 15歳 | 約6時間2分 | — |
小学校高学年(10歳)の約3時間26分から、中学生になると2時間近く増えます。そして中2・中3では、およそ4人に1人が平日7時間以上を画面に使っています。

もうひとつ、見ておきたい数字があります。中学生本人に聞いた「インターネットにのめりこんで勉強に集中できなかったり、睡眠不足になったりしたことがある」への回答は24.5%。子ども自身が自覚しています。 親から見て困っているだけでなく、本人も困っている——この前提は、話し合いを始めるうえで重要です。
「スマホ=成績が下がる」ではない——調査が示す2つの傾向
冒頭で触れた、文部科学省の令和8年度全国学力・学習状況調査(2026年8月4日会見)が示した2つの傾向を、並べてみます。
- SNSや動画視聴等の利用時間が長い児童生徒ほど、各教科の正答率やスコアが低い傾向
- ICT活用に自信がある児童生徒ほど、各教科の正答率やスコアが高い傾向
同じ「デジタル機器を使う」でも、向きが逆です。ここから読み取れるのは、問題は機器そのものではなく、時間の使われ方にあるということです。
ここで大切なのは、これは傾向であって、因果関係の証明ではないという点です。「スマホを減らせば点が上がる」と単純に言えるデータではありません。実際には、家庭の生活リズム、睡眠時間、勉強の習慣など、いくつもの要素が重なっています。
それでも、家庭で打てる手ははっきりしています。削るべきは「スマホの時間」ではなく、「勉強と睡眠を押しのけている時間帯」です。同じ2時間でも、夕食後すぐの2時間と、就寝前の2時間ではまったく意味が違います。
取り上げても解決しない、3つの理由
さて、冒頭の「取り上げたのに成績が戻らなかった」ご家庭の話に戻ります。見落とされているのは、次の3つです。
① 空いた時間の使い道が決まっていない
スマホを取り上げると、たしかに3〜5時間が空きます。しかしその時間に何をするかが決まっていなければ、ぼんやり過ごす時間に置き換わるだけです。「取り上げる」は時間をつくる手段であって、勉強をつくる手段ではありません。
② 目的が「罰」になっている
成績が下がった罰として取り上げると、子どもの中でスマホと勉強が敵対関係になります。返してもらうために勉強する状態は長続きせず、返した瞬間に元に戻ります。動機づけの話は勉強のやる気を出す方法でも触れています。
③ 親子で決めていないので、隠れて使う
一方的に決めたルールは、守られるのではなく、隠れます。夜中に布団の中で使う形に変わると、睡眠時間だけが削られ、いちばん避けたい状態になります。
だから、次のステップは「取り上げる」ではなく、「使い方の設計を、本人と一緒にやり直す」になります。
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わが家のスマホルールの決め方——5ステップ
守られるルールには、共通の作り方があります。
ステップ1:まず「今」を測る(1週間)
いきなり制限しません。スマホの設定画面(スクリーンタイム/Digital Wellbeing)で、実際の利用時間とアプリ別の内訳を1週間分、親子で一緒に見ます。ほとんどのご家庭で、子ども本人がいちばん驚きます。ここが出発点です。
ステップ2:時間ではなく「時間帯と場所」を決める
「1日2時間まで」は、守れているかどうかが分かりにくく、破ったかどうかの争いになりがちです。代わりに決めるのは次の2つです。
- 使わない時間帯(例:夕食後の勉強時間/就寝1時間前から朝まで)
- 使わない場所(例:自分の部屋には持ち込まない。充電はリビング)
とくに効くのは「就寝前」と「勉強中」の2か所です。睡眠が削られる経路と、集中が切れる経路を、まとめて塞げます。
ステップ3:例外を先に決めておく
「部活の連絡」「友達との待ち合わせ」「調べもの」など、例外は必ず出ます。先に決めておかないと、そのつど交渉になり、ルールが形骸化します。例外を認める代わりに、終わったら元の場所に戻す——ここまでを1セットにします。
ステップ4:破ったときの扱いを、感情でなく手順で決める
「次の日は1時間短くする」など、あらかじめ決めた手順にします。その場の怒りで没収すると、②の「罰」に逆戻りします。
ステップ5:2週間ごとに見直す
最初のルールは必ずどこか合いません。 「守れなかった」ではなく「合わなかったから直す」と扱えると、ルールが親子の共同作業になります。見直す日をカレンダーに入れておいてください。
このやり方が効くのは、子どもに決定権の一部を渡しているからです。人は、自分で決めたことのほうが守ります。上から与えられたルールは、破る対象になります。
そのまま使える「わが家のスマホルール表」
決めた内容は、紙に書いて、見える場所に貼るのがおすすめです。口約束は必ず食い違います。

書き込む項目は5つだけです。
- 使わない時間帯(勉強時間/就寝◯時以降)
- 使わない場所(自室に持ち込まない/充電はリビング)
- 例外として認めること(部活連絡・調べもの・◯曜日は延長など)
- 破ったときの手順(感情でなく、決めた対応)
- 次に見直す日(2週間後の日付)
最後に親子それぞれがサインします。 形式的に見えますが、「自分も納得して決めた」という記録が残ることに意味があります。
指導事例:定期テストの点数が2学期に大きく下がった中2の生徒を担当したことがあります。ご家庭ではスマホを一度取り上げていましたが、成績は戻っていませんでした。スクリーンタイムを一緒に見ると、平日の利用は6時間台、うち半分以上が22時以降。就寝が1時を回る日が続いていました。そこで、時間の総量ではなく「22時以降はリビングで充電」だけを本人と決め、代わりに休日の使用は自由にしました。3週間で就寝時刻が23時台に戻り、朝の授業で寝てしまうことがなくなりました。点数が動いたのはその次のテストからです。削ったのはスマホの時間ではなく、睡眠を削っていた時間帯でした。(※個人の事例であり、結果を保証するものではありません)
よくある質問(FAQ)
何時間までなら大丈夫、という基準はありますか?
一律の基準はありません。同じ2時間でも、勉強と睡眠を確保したうえでの2時間と、就寝時刻を削っての2時間では意味が違います。時間の総量より、睡眠時間が確保できているか/勉強の時間帯に手が伸びていないかで判断してください。いま必要な勉強時間の考え方は中学生の平均勉強時間にまとめています。
取り上げると激しく反発します。どうすればいいですか?
取り上げる場面では、ほぼ必ず反発が出ます。「取り上げる」から「時間帯と場所を決める」に切り替えると、交渉の余地が生まれ、話し合いになりやすくなります。反抗期の関わり方そのものについては、勉強しない中学生をほっとくとどうなる?もあわせてご覧ください。
フィルタリングは設定したほうがいいですか?
中学生の保護者の58.3%が利用しています(こども家庭庁・令和7年度調査)。トラブルの予防としては有効ですが、勉強時間を増やす仕組みではありません。フィルタリングは安全のため、ルール表は学習のため、と役割を分けて考えてください。
集中が続かないのは、スマホのせいだけでしょうか?
そうとは限りません。手元にスマホがなくても集中が続かない場合は、勉強のやり方そのものや、学習面の特性が関係していることもあります。気になる場合は勉強しない中学生は発達障害?も参考にしてください。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|削るべきは「時間」ではなく「時間帯」
最新の全国調査が示しているのは、次の3点でした。
- 中学生の平均利用時間は平日1日5時間台。中2・中3の約4人に1人が7時間以上
- 学力調査では、SNS・動画が長い層ほど正答率が低い一方、ICT活用に自信がある層ほど高い。問題は機器ではなく使われ方
- 中学生の24.5%が本人も「勉強に集中できない・睡眠不足」を自覚している
だからこそ、取り上げるのではなく、時間帯と場所を親子で決め直す。効くのは「就寝前」と「勉強中」の2か所です。今夜、スクリーンタイムの画面を一緒に開くところから始めてみてください。この1週間の記録が、いちばん説得力のある材料になります。
スマホと勉強の両立を、仕組みから整えるなら
ルールを決めても、空いた時間に何をするかが決まっていなければ、勉強には変わりません。ここがいちばんの壁です。
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