執筆・監修:田村 健一先生(数学・理科指導/指導歴12年)
「方程式が苦手」の本当の原因を、2単元手前まで戻って特定するのが得意。
教科書もワークも机の上に出している。それなのに、授業で言われていることも、テストの問題も、どこかで分からなくなっている——そんな高校生と、その様子を見ているお母さん・お父さんに向けて書きました。
「勉強しない」のが悩みではなく、「机には向かっているのに、中身が分かっていない」ことが悩みなら、この記事はその入口から始めます。この記事で答えるのは、①いつからついていけなくなったのか ②今、どこで止まっているのか ③評定が下がる前に、何から手をつければいいか、の3つです。
まず結論(一問一答)
Q. なぜ高校になると急に授業についていけなくなるのですか?
A. 中学までとは授業の進み方が変わり、予習を前提に進む授業や、家庭学習に回る演習が増えるためです。仕組みは本文で説明します。
Q. 今すぐ確かめるべきことは何ですか?
A. 「授業中」「家で解くとき」「テスト」のどこで止まっているかです。止まっている場所によって、次にすることが変わります。
Q. 何からやればいいですか?
A. 戻る範囲を広げすぎず、1つに絞ることです。次の定期テストまでにできることから始めます。
Q. 親は何をすればいいですか?
A. 勉強の中身に入ることではなく、「いつ・誰に聞くか」を一緒に整えることです。
では、高校生の「ついていけない」は、そもそもどこから始まるのでしょうか。まずは入口の見分け方からです。
「ついていけない」と「勉強しない」は入口が違う
「勉強しない」と「ついていけない」は、似ているようで入口が違います。机に向かわないことが悩みなら、勉強しない高校生の、学年ごとに次に動く数字の記事が近道です。この記事が扱うのは、机には向かっているのに、授業やテストの中身がどこかで分からなくなっている状態です。すでにテストの点数が学校の基準に近い、または赤点という形で出ているなら、進級の基準を先に確認しておくと安心です(このあとの章で、確認先の記事をご案内します)。
入口が「理解度」だと分かったら、次はなぜ中学では平気だったのに、高校で変わったのかです。
高校で授業についていけなくなる仕組み
中学までは、授業を聞いていれば内容が分かる、という感覚で過ごせていた人も多いはずです。高校になると、その感覚が崩れることがあります。理由は3つあります。
①予習を前提に進む授業——教科書を読んでいる前提で説明が進み、その場で初めて聞く内容という扱いにはなりません。
②演習の多くが家庭学習に回る——授業では解き方の要点だけを扱い、実際に手を動かす時間の多くが宿題や自習に回ります。
③質問できる機会が減る——科目が細かく分かれ、科目ごとに担当の先生も変わります。そのぶん、分からないところをその日のうちに聞ける機会は、中学のころより少なく感じられることが多くなります。
この3つが重なると、「授業は聞いているのに、気づけば分からなくなっている」という状態が起きやすくなります。
仕組みが変わったことは分かりました。では、学年によってこの変化はどう出るのでしょうか。
学年別の原因——学年で変わる、つまずきの出方
学年によって、「ついていけない」の出方には傾向があります。これは学年が上がるほど深刻という統計的な序列ではありません。 理解のつまずき方の出方の違いとして見てください。

高1
中学までは授業内で理解が完結していた単元が、高校では前提として進みます。予習という新しい習慣に慣れる前に、次の単元へ進んでしまうことがあります。
高2
科目がさらに細かく分かれ、内容も抽象的になる時期です。選択科目によって、授業の進み方や難度の体感が変わります。
高3
受験に向けた勉強と、学校の授業の両方を同時に進める時期です。受験科目の勉強を優先するあまり、授業そのものの理解が後回しになりやすくなります。
学年の傾向が分かっても、今のお子さんがどこで止まっているかは、また別の話です。
どこで分からなくなっているかを確かめる——3つの分かれ道
「ついていけない」といっても、止まっている場所は一人ひとり違います。次の3つのうち、どれに近いか確かめてください。
①授業を聞いている時点で、話についていけない——このときは、どこまで戻るかを決めることが最初の一歩です(次の章で扱います)。
②授業は分かる気がするのに、家で一人で解こうとすると手が止まる——このときは、家で解けないときの、1週間の勉強の置き方を見直すことが近道です。
③家では解けるのに、テストになると点にならない——このときは、定期テストの回し方(範囲発表より前から回すか)を見直すことが近道です。(回し方は、②と同じ記事の定期テストの章で扱っています)

どの場合でも、学校の基準に近い科目がある、またはすでに赤点という形で点に出ている科目があるなら、赤点を取ったときの進級の基準と、学年末までにすることを先に確認しておくと安心です。
止まっている場所が分かったら、次はどこまで戻るかです。
戻る範囲を1つに絞る
戻る範囲は、広げすぎないことが大切です。数学と英語は積み上げの教科なので、今の単元が分からない原因が、1つか2つ手前の単元にあることが多くあります。逆に、今の単元だけを繰り返しても、手前の穴がふさがらないまま同じところで止まることになります。どこまで戻るかは、今の単元の例題を1問解いてみて、手が止まったところで使っている前の単元を1つ選ぶ、という決め方ができます。
中学の内容まで戻る必要がある場合は、中学数学のつまずきやすい単元(中学生向けの記事)も参考にしてください。
ここまでは、どの高校生にも当てはまる話です。進学校ならではの事情が、もう一つあります。
進学校で「ついていけない」と感じるとき
進学校では、周りの生徒の理解や進度が速く感じられることがあります。ただし、これは学力の差というより、授業の進み方や課題の量の感じ方の違いであることもあります。
大切なのは、勉強の「量」をいきなり増やすことではなく、戻る範囲と順番を先に決めることです。学校から出ている課題を回し切れているかどうかを、まず一つの基準にしてください。
ここから先は、「仕組み」の話ではなく、「今、何をするか」です。
評定が下がる前に、次の定期テストまでにやること
評定は学期末にまとめて決まりますが、その材料になる定期テストや提出物は、日々の積み重ねです。だからこそ、次の定期テストまでにやることを、1つの時間軸で決めておくことが重要です。
今、次の定期テストまでにできることは3つです。①戻る範囲を1つに絞って手をつける ②提出物を後回しにしない ③分からないところを、次の授業までに教科担任に質問する。 この3つを次の定期テストまでに実行できるかどうかで、その後の評定の動き方が変わってきます。先延ばしにするほど、戻る範囲は広がっていきます。
科目ごとにどこを厚くするかは、高校の定期テストで、厚くする科目・薄くする科目の決め方で詳しく扱っています。
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今から何をするかが分かったら、次は保護者が何をするかです。
保護者ができること——いつ・誰に聞くかを整える
ここからは、お子さんの様子を見て「何か手伝えることはないか」と考えているお母さん・お父さんへの話です。
保護者ができるのは、勉強の中身そのものに入ることではなく、「いつ・誰に聞くか」を一緒に整えることです。たとえば、教科担任の先生に質問できるタイミングを本人と確認する、三者面談で聞くことを1つだけ事前に決めておく、といったことです。
それでも回らないときは、学校の先生に加えて、塾や家庭教師という家庭の外の手を借りる選択肢もあります。大学受験に向けて塾をいつから考えるかは、高校生の塾はいつから(学年で変わる塾の役割)で扱っています。
よくある質問に、ここまでで触れていないことをまとめます。
よくある質問
「高1の壁」とは何ですか?
「高1の壁」という言い方をされることがありますが、公的な用語ではありません。高校の授業が予習を前提に進み始める時期に、その変化にとまどう高1生が多いことから使われる通称です。
進学校でついていけないと大学受験に不利になりますか?
一律に不利になるとは言えません。ただし、評定平均が出願条件に関わる入試方式もあります。評定平均の出し方は評定平均の出し方(大学の推薦で使われる数字)で確認できます。
数学だけついていけないときはどうすればいいですか?
数学は積み上げの教科なので、今の単元より1つか2つ手前が原因になっていることがあります。戻る範囲の決め方は、「戻る範囲を1つに絞る」でお伝えした考え方と同じです。
塾や家庭教師に相談するタイミングはいつですか?
決まった時期はありません。止まっている場所を自分たちである程度確かめてみて、それでも次の定期テストまでに戻せそうにないと感じたときが一つの目安です。
授業が分からないと先生に言いにくいときはどうすればいいですか?
休み時間に直接聞くのが難しければ、三者面談や担任の先生を通じて伝えてもらう方法、学校によってはオンラインの質問フォームなど、別の聞き方があります。まずは本人が聞きやすい方法を1つ選ぶことから始められます。
そのほかの疑問は、よくある質問もあわせてご覧ください。
まとめ|3つの分かれ道と、次の定期テストまでにやること
- 「ついていけない」は、「授業中」「家で解くとき」「テスト」の3つの分かれ道のどれかで整理できます
- 学年による出方の違いはありますが、統計的な序列ではありません
- 次の定期テストまでにやることは、戻る範囲を絞る・提出物を出す・教科担任に聞くの3つです
- 保護者にできるのは、勉強の中身ではなく、「いつ・誰に聞くか」を整えることです
今日できることは1つです。3つの分かれ道のうち、お子さんがどれに近いかを確かめてください。
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