中学受験の過去問はいつから?始める時期の目安と、直前期までの進め方

中学受験の過去問はいつから?始める時期の目安と、直前期までの進め方 中学受験

執筆・監修:小川 真理子先生(受験アドバイザー/指導歴15年)
「何から手をつければいいか」を、現実的な学習計画に翻訳するのが役目。

小6の秋、机の上に積んだ過去問集を前に、「今からこれを解かせてもいいのだろうか」と手が止まったお母さん・お父さんへ。「小6の秋が目安」という言葉は、あちこちで見かけると思います。ですが、目安どおりに始めさえすれば安心、というわけではありません。偏差値の数字だけで「始めていいか」を判断すると、かえって遠回りになることがあります。

そしてもう一つ、多くの記事があまり深く書いていないことがあります。入試までの最後の約2か月、過去問をどう使うかです。この記事の後半では、過去問で思うような点が取れなかった日に、何と声をかければいいかまでお伝えします。

まず結論(一問一答)

Q. 過去問はいつから始めればいいですか?
A. 多くの指導現場では「小6の秋」が目安とされています。 ただし公的な基準ではなく、経験則としての目安です。大事なのは日付そのものより、お子さんが始めてよい状態にあるかです。

Q. 何年分解けばいいですか?
A. 第一志望は5〜10年分、併願校は3〜5年分が目安です。ただし情報源によって幅があり、「これが正解」という数はありません。

Q. 直前期は、過去問をどう使えばいいですか?
A. 入試までの最後の約2か月は、それまでとは違う使い方に切り替えます。 新しい年度に手を広げず、直近の1〜2年分をあえて残しておき、本番と同じ時間配分で解く——この3点が核になります。

——結論を3行でお伝えしましたが、大事なのは「いつから」という日付そのものより、”何を見て決めるか”です。

過去問はいつから?——多くの指導現場で「小6の秋」が目安とされる理由

多くの指導現場で「小6の秋」が過去問を始める目安とされるのには、理由があります。

小6の夏ごろまでに、入試範囲の単元学習がひととおり終わる進め方が多く見られます。過去問は、習っていない範囲が残っていると得点が実力を反映せず、「解けなかった」のか「まだ習っていないから解けなかった」のかの区別がつきません。単元学習が一巡してから取り組むほうが、過去問を診断の道具として使えます。

もう一つの理由が、志望校です。小6の秋は、多くの家庭で第一志望・併願校の輪郭がはっきりしてくる時期でもあります。過去問は、行きたい学校ではなく、実際に受ける学校の出題傾向に合わせて解くことで意味を持ちます。志望校が固まっていない段階で手をつけても、方向のずれた演習になりがちです。

裏を返せば、単元学習が一巡していない段階や、志望校の候補が絞りきれていない段階で無理に始めても、得られるものは限られるということでもあります。「まわりが始めたから」という理由だけで急ぐよりも、この2つの条件がどこまで整っているかを、まず確かめてみてください。

ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。「小6の秋」という時期は、公的な基準として定められているものではありません。 多くの指導現場で共有されている経験則であり、目安です。お子さんの状態や、志望校の傾向によって、前後することは珍しくありません。

なお、この目安は「過去問を始める時期」の話であり、「塾に入る時期」とは別の話です。中学受験を目的に塾を検討している場合は、小学生の塾はいつから(中学受験を目的にする場合)も参考になります。

中学受験の過去問を解き始める時期の目安を示したタイムライン図。小6の夏に準備、小6の秋に第一志望の1回目、秋から冬にかけて併願校と2回目以降、入試までの最後の約2か月は新しい年度に広げず残しておいた年度を本番の時間で解く、という4つの区分を帯で表している。業界の経験則による目安であることを注記している

——「小6の秋」という目安を聞いても、うちの子は本当に今なのか、迷う方が多いはずです。

うちの子は始めてよいか——偏差値の数字ではなく「範囲が一巡したか」で見る

「偏差値がいくつになったら始める」という決め方を、つい探したくなるかもしれません。ですが、中学受験の偏差値は、模試の主催団体によって出方が大きく異なります。同じ子どもが同じ学力のまま別の模試を受けても、出てくる偏差値の数字は変わることがあります。ですから、偏差値の生の数字だけで「始めてよいか」を線引きするのは、あまり向いていません。

この記事では、偏差値の数字そのものではなく、次のような状態で「始めてよいか」を見ることをおすすめします。

中学受験の過去問を始めてよいかを確認するチェックシート。受ける学校の候補が絞れていることを前提に、全範囲の単元学習が一巡したか、直近の模試やテストで同じ単元の失点が続いていないか、1回分を時間どおりに解き切れるか、解いた後の直しの時間を週に確保できるかの4項目を、偏差値の数字を使わずにチェックする形式

  • 全範囲の単元学習が一巡したか
  • 直近の模試やテストで、同じ単元の失点が続いていないか
  • 1回分を時間どおりに解き切れるか
  • 解いた後の直しに使う時間を、週に確保できるか

この4つのうち、いくつか当てはまらない項目があっても、「まだ始めてはいけない」という意味ではありません。たとえば「1回分を時間どおりに解き切れるか」が不安なら、まず1年分を時間を計って解き、どこで時間が足りなくなるかを確かめてみる、という始め方もあります。反対に、4つとも整っていて、受ける学校の候補もおおむね絞れているなら、目安の時期を待たずに始めてもかまいません。

大事なのは、「小6の秋になったから」ではなく、お子さんの状態が整っているかどうかで判断することです。

——始めてよい状態だと分かったら、次に迷うのが「何年分やればいいか」です。

何年分解くか——第一志望と併願校で分ける目安

過去問を何年分解くかも、よく聞かれる質問です。多くの指導現場で挙げられる目安は、第一志望が5〜10年分、併願校が3〜5年分です。

ただし、この年数も情報源によって幅があります。第一志望で10年分以上を挙げる情報源もあれば、5年分程度とする情報源もあります。「◯年分が正解」という一つの答えがあるわけではなく、目安として受け止めてください。

年数よりも大事なのは、1年分をどれだけ丁寧に使うかです。1年分を1回解いて終わりにするより、解いた後の直しにしっかり時間を使うほうが、過去問から得られるものは大きくなります。年数を追いかけて解きっぱなしになるくらいなら、年数を絞って直しに時間を回すほうが、結果として力になることも珍しくありません。

学校によっては、合格最低点を公表していることがあります。公表しているかどうかや公表の仕方は学校ごとに違うため、志望校が公表しているかを確かめておくと、過去問を解いたあとの目安の一つになります。

第一志望と併願校で年数の目安に差があるのは、かける時間の配分が違うからです。第一志望には出題の傾向をつかむために厚めに時間を使い、併願校には形式に慣れる程度の年数で十分、という考え方が背景にあります。併願校の数が多いご家庭では、1校あたりの年数をさらに絞ることもあります。

——年数の目安が分かっても、実際の使い方を間違えると、せっかくの過去問が力になりません。

過去問の進め方——1回目は「診断」、2回目からは「直し」と「時間配分」

過去問の基本の流れは、「解く→採点する→直す」の3つです。ただ、1回目と2回目以降では、果たす役割が違います。

1回目は「診断」です。 今の実力が、志望校の出題にどれくらい届いているかを知るための道具として使います。時間を計って解き、採点し、得点だけでなく、どの大問で時間が足りなかったか、どの単元で落としたかまで見ます。1回目の点数がそのまま合否を占うものではありません。あくまで、今どこにいるかを知るための1回です。

2回目からは、直しと時間配分の練習に役割が変わります。 同じ年度を繰り返し解くこともあれば、別の年度に進むこともありますが、どちらの場合も、1回目で見つかった弱点をつぶすことと、制限時間の中でどう解き進めるかの感覚を身につけることが中心になります。

直しをするときは、間違えた問題をもう一度解き直すだけでなく、なぜその大問で時間が足りなくなったのか、なぜその単元を落としたのかまで振り返ると、次の1年分に生きてきます。

過去問は「解いた年数」より、「1年分をどれだけ次に生かせたか」で力になります。

——ここまでの使い方は、まだ時間に余裕があるときの話です。入試が近づく最後の約2か月は、少し違う使い方が必要になります。

直前期(入試までの最後の約2か月)の過去問の使い方——広げない・残しておく・本番の時間で解く

入試までの最後の約2か月に入ったら、過去問の使い方を切り替えます。ポイントは3つです。

1つ目は、新しい年度に手を広げないことです。 ここでいう「新しい年度」は、直前期のために残しておく年度(2つ目)以外で、まだ解いていない年度のことです。この時期になってそうした年度を初めて解く分だけ増やしていくと、間違えた単元に戻って復習する時間が削られていきます。直前期に残された時間は限られています。その時間を「新しい問題を解く」ことに使うか、「これまで間違えた単元を直す」ことに使うかで、本番までに積み上がる力は変わってきます。直前期は、後者に時間を使うほうが効果的です。

2つ目は、直近の1〜2年分を、あえて解かずに残しておくことです。 それまでの時期にすべての年度を解き終えてしまうと、直前期に使える「本番に近い形の演習」がなくなってしまいます。直近の年度を1〜2年分、意図的に手をつけずに取っておくことで、直前期のための教材として使えるようにしておきます。

3つ目は、残しておいたその年度を、本番と同じ時間配分で解くことです。 時間を計らずに解いた過去問と、本番と同じ緊張感の中で時間を計って解いた過去問とでは、得られる情報が違います。時間内に解き切れる分量なのか、どの大問にどれだけ時間を使うべきかは、本番と同じ条件で解いてはじめて分かることです。

この3つは、どれも「限られた時間をどう配分するか」という実務上の理由から来ています。新しい年度に広げなければ、そのぶん復習に回せる時間が増えます。年度を残しておけば、直前期に使える本番形式の演習が確保できます。この考え方は、志望校の数が多いご家庭でも、少ないご家庭でも変わりません。

直前期の過去問の使い方は、それまでの時期の使い方とは目的が違います。「解く年数を増やす」時期から、「限られた時間で、いま持っている力を本番で出し切る」準備をする時期へと切り替わる、と考えてください。

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——計画どおりに進めても、点が伸び悩む日はあります。

点が取れなかった日の声かけ——点数ではなく「どの大問か」を一緒に見る

過去問の点数を見て、思わず声が出そうになったお母さん・お父さんへ。

最初に解いた過去問で、思うような点が取れないことは、決して珍しくありません。全国家庭教師協会の指導現場でも、1回目の過去問は「今の実力を知るための道具」として位置づけ、その結果だけで一喜一憂しないようお伝えしています。

声をかけるときは、点数の話から始めないことがポイントです。「何点だったの」ではなく、「どの大問で時間が足りなかった?」「どの単元で落とした?」というように、点数の先にある中身から聞いてみてください。言い方は、ご家庭の言葉に置き換えてかまいません。同じ「できなかった」でも、時間が足りなかったのか、単元そのものが分かっていなかったのかで、次にやることは変わります。

もう一つ、覚えておいていただきたいのは、直前期に入ってからの点数は、それまでの積み重ねの結果であって、その日その日の頑張りが足りなかったからではない、ということです。点数が伸び悩む日があっても、それは「どこを直せばいいか」を教えてくれているサインとして受け止めてください。

隣で見ている保護者のほうが、点数の上下に一喜一憂してしまうこともあります。その気持ちは自然なことですが、表情や声のトーンには出さないよう意識してみてください。お子さんは、保護者の反応から「今の自分は大丈夫なのか」を敏感に読み取っています。

——声のかけ方と合わせて、保護者ができる準備がもう一つあります。

保護者ができること——過去問の準備と記録、塾を使っていない家庭の場合

過去問に関して、保護者ができる準備は大きく2つあります。

1つ目は、過去問題集の準備です。 購入の目安は、多くの場合7〜8月ごろです。解く分だけコピーを用意しておくと、原本を繰り返し使うことができます。

2つ目は、記録表を作ることです。 解いた日付、年度、大問ごとの得点、時間配分の様子を1枚にまとめておくと、直しをするときにも、直前期に見返すときにも役立ちます。細かく作り込む必要はありません。お子さんと一緒に、続けられる形で構いません。

記録表は、成績の良し悪しを記録するためのものではなく、「どこを直したか」を積み上げていくためのものです。同じ単元で失点が続いているかどうかは、1回の結果だけでは見えにくく、数回分を並べてはじめて分かることがあります。

塾に通っていない家庭では、これらの準備を家庭の側で引き受けることになります。過去問をいつから始めるか、どの順で解くかも含めて、進め方を自分たちで組み立てていく必要があります。塾をやめて家で受験を続けている場合に、過去問を含めて家庭が引き受けることの全体は、塾をやめて家で受験を続ける場合に、家庭が引き受けることにまとめています。

——ここまでの目安を、最後にもう一度、よくある質問の形で振り返ります。

よくある質問(FAQ)

過去問は何周すればいいですか?

決まった回数はありません。1回目は「今の実力を知る診断」、2回目以降は「直しと時間配分の練習」という役割の違いで考えると、回数にこだわりすぎずに進められます。弱点が直せたと感じられるまで繰り返す、という向き合い方が実際的です。同じ年度を何度も解き直すか、別の年度に進むかも、そのときの弱点の残り方によって変わります。

過去問題集はいつ買えばいいですか?

多くは7〜8月ごろが目安です。ただし発売時期は学校によって異なるため、志望校が決まった段階で、書店やオンラインで確認しておくと安心です。早めに手元に置いておくと、いつから始めるかの計画も立てやすくなります。

過去問は新しい年度から解きますか?古い年度から解きますか?

直近の1〜2年分は、直前期に本番と同じ時間配分で解くために、あえて残しておきます(直前期の過去問の使い方の章で触れたとおりです)。それ以外の年度をどの順で解くかは、ご家庭や塾の方針によって変わるため、一つの正解があるわけではありません。出題傾向に大きな変化があった年度がある場合は、その前後で分けて考える、という進め方もあります。

通っている塾から「まだ過去問は解かないで」と言われました。家庭の判断で始めていいですか?

塾の方針を優先し、塾に相談することをおすすめします。 塾によってカリキュラムの進め方が異なり、過去問に取りかかる時期も、それぞれの指導計画に組み込まれていることが多いためです。家庭の判断で先に進めてしまうと、塾の授業内容と足並みがそろわなくなることもあります。

過去問の点数が、合格最低点に届かないまま直前期に入ってしまいました。どうすればいいですか?

直前期は、新しい年度に手を広げるのではなく、これまで間違えた単元の直しに時間を使うことをおすすめします。直前期に入ったからといって、できることがなくなるわけではありません。残された時間で何に取り組むかを、単元ごとに整理してみてください。どの単元を優先すべきか判断が難しいときは、外の目を借りるという選択肢もあります。

まとめ|目安は目安。お子さんのペースに合わせていい

  • 過去問を始める目安は「小6の秋」ですが、これは経験則であり、公的な基準ではありません
  • 始めてよいかは、偏差値の数字ではなく、範囲が一巡したかなどの状態で見ます
  • 何年分解くかも目安です。第一志望5〜10年、併願校3〜5年が一つの目安になります
  • 直前期(入試までの最後の約2か月)は、新しい年度に広げず、残しておいた年度を本番の時間で解くという使い方に切り替えます
  • 点が取れなかった日は、点数ではなく「どの大問か」を一緒に見ることから始めてください

目安は目安です。お子さんのペースに合わせて、少し前後してもかまいません。

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